小保方晴子氏のSTAP細胞論文騒動の“震源”となったサイト「PubPeer」をご存じだろうか。2012年に生まれた比較的新しい論文検証のためのソーシャルメディアサイトだ。
この種のサイトが登場した背景には「過度な競争により功を焦らざるをえないという研究環境がある」と愛知淑徳大学人間情報学部教授・山崎茂明氏は指摘する。「過去には1980年、アメリカのある研究者が、60編におよぶ出版済み論文をタイプし直し、自分の名前で発表していたアルサブティ事件が有名。現代のネット環境下で、意図的な盗用や重複発表などが広がっている」。
折しも、昨年4月に文科省令により博士論文公表のインターネット化が施行されたことを受け、大学側が論文をチェックする体制を整えるニーズが高まっている時期でもあった。剽窃・盗作検知オンラインツール「iThenticate」の販売代理店であるiGroupJapan・渡邉正樹氏によると、「昨年11月時点で2件だった導入先が、現在14件になった」。大学などが短期間で対策を進めつつあることがわかる。
一方で山崎氏は「これまで誠実に研究に取り組んできた多くの研究者にとり、この種のサイトにとらえられないよう、無駄なエネルギーを費やすことになるかもしれない」と話す。研究の本質に関わらない表記や言い回しで、“検索避け”のようなことを、やらなくてはならなくなるというわけだ。研究者たちは小保方氏の論文の真偽だけでなく、“検証ブーム”が収まることにも注目しているのかもしれない。