仕事と自分の人生、わけるべきか
最初の会社にはとても感謝しています。仕事の基礎を教えてくれたのは最初の会社だし、営業の天才みたいな先輩もたくさんいて、本当に勉強になりました。完全な実力主義で、20歳そこそこの私にぽんとチームやグループを任せてくれたことも、普通ではありえない貴重な経験でした。
ただ、そのとき気づいたのは、社会に出てやりたいことが明確にはない自分にとって、仕事を頑張るためのエネルギーというのは、いま現在が楽しいか、あるいは何かしら社会に対する意義が感じられるものでなければ、湧いてこないということだったんです。それで会社を辞めて、一度大学に戻ることにしました。実際に働いてみて初めて、マネジメントのことや社会のことをもっと学んでみたいと思ったから。お金は毎日タクシー通勤したり、スタッフに食事を奢ったりしていたので、まったく残っていませんでしたけど。
私がスローガンに入社したのは、そうして復学した学生時代にインターンでしばらく働いたことがきっかけでした。フェイスブックで友達から面白そうな会社があると聞いて、「優良ベンチャーの見分け方」という社長の伊藤(豊)さんのセミナーに参加したんです。「優秀な人材を未成熟な分野に投入することで、新産業が生まれ続けるエコシステムをつくる」という伊藤さんの話に共感して、ここならお金に関係なく働ける「意義」があるかなと思ったんですね。不況の時代に育った人間として、日本に新しい産業が必要だという問題意識はずっとありましたし、「才能の最適配置の不全がボトルネックになっている」という話にもとても納得感があったので。
この1年間、この会社で働いていてどうだったかですか? うーん、そうですね、私は営業や採用のコンサルティングなどをしているんです。だから、ほかにもいろんなベンチャー企業のことを知る機会があるんですよ。
で、こうしたベンチャー企業で働いている人たちって、変な言い方かもしれませんが、パブリックサーバントの感覚に近いものを持っているように最近は思っています。城山三郎さんが小説で描いているような、社会に尽くす感覚ですね。自分がどうしたいではなくて、社会のためにはコレ必要じゃん、みたいなものに対して当たり前に行動していける人たちの集まり、というのかな。
この会社もまさにそうなんですけれど、魅力的なベンチャー企業の多くには仕事とプライベートが理念の面でも分かれていないという特徴があるように感じます。仕事で達成したいことと自分の人生で達成したいことが共通している、っていうのかな。
その意味では価値観が合う人同士で働ける職場が見つかれば幸せを感じられるけれど、そうじゃないと単につらいだけの職場になるわけです。だからこそ、私たちのような会社が必要なのだと今は思っているし、こういう環境で働けていることが楽しいと感じているんですよね。