日本では労働市場の流動化が進み、多くの企業人や働く人が関心をもち始めたのが「働きがい」や「働きやすさ」である。それらの視点で企業を評価することは、働く人が知的資本を投下するかどうかを考える意味で重要であると筆者は説く。

「働きやすさ」とは「働きがい」と何が違うのか

「働きがいのある会社」という考え方が話題になってきている。私自身も、従業員の働きがいを高めようとする人事部の方々や、働きがいのある企業を評価したり、ランキングしたりする仕組みを開発しようとする団体の方々から相談を受けることもある。

良いことだと思う。企業というものが人で成り立っている以上、また人は企業に採用されるだけで優れた経営資源に変身するのではない以上(つまり、人という資源は意思をもった存在である以上)、働きがいのある企業で、人はより良い資源となるだろう。企業の実例を見ても、働きがいと企業の競争力は正の相関関係があるようだ。また実感とも合致する。

また、企業だけではなく、働く人もより幸せだろう。多くの人が企業や組織という場で生活の糧を得ながら人生をおくる、というのが現実である以上、その場で働きがいを感じられるほうが、そうでないよりも幸せである。

もちろん、相対的に職場や会社で一番生きがいを感じるかは別問題だ。そうではないと主張する人も増えてきた。でも、人生のうち多くの時間を過ごす場であるから、やはりそこにポジティブな価値を見出したい。

また、働きがいと同様に今、関心が高まっている概念に「働きやすさ」がある。特にワークライフバランスや長時間労働が話題になるにしたがって、多くの企業が関心をもっているようだ。

働きやすさとは働きがいと何が違うのか。私は、働きがいが、人材を前へ前へと押し出す力だとしたら、働きやすさは、それを阻害する要因を取り除くことだと考えている。