働く人が転職先を選ぶ際、選択基準として「働きがい」より「働きやすさ」が重視される傾向にあるという。これらを確保するには、企業と働く人がともにつくりこんでいくことが必要であると筆者は説く。

なぜ企業にとって「働きやすさ」の提供は難しいのか

現在、働く人の意識のうえで、企業を選ぶ際に、働きやすさを重視するようになっているようだ。やや古いが転職支援会社のエン・ジャパンが2008年4、5月に行ったインターネット調査によれば、転職先を選ぶ際に、働きやすさと働きがいのどちらを重視するかを選択してもらったところ、働きやすさを選択する割合が、働きがいを選択する割合よりわずかだが多く、回答者約730名のうち、54%であった。この傾向は、働き盛りの30代、40代でも変わらず(おのおの57%と54%)、ようやく50代になって初めて48%に低下する。

私としては、人生の後半にさしかかった50代において、逆に働きやすさが多くなってもいいような気もするのだが、いずれにしても、企業の選択基準として働きやすさは、若手から中堅まで大きな位置を占めるようだ。

また、働きやすさと必ずしも同じではないが、転職先を検討する際、ワークライフバランスを考慮すると答えた割合も、87%である。考慮するポイントとしては、「休日休暇」(82%)と「労働時間(残業時間)」(78%)に回答が集中した。

ただ、こうした状況に企業が困惑しているのも事実だ。どんなにワークライフバランスが主張されても、また働く人がそれによって転職をしたとしても、いまだに企業が、そうした働きやすさを提供するのは難しいようだからだ。

なぜなのだろうか。私はこの背景には、ある一つの要素があるように思う。それは、企業がここしばらく、働きやすさという評価基準を無視して、仕事や職場の合理化を進めてきたことである。合理化とは、別の言い方をすれば、職務や職場の効率アップである。