この区分は働きやすさと働きがいの違いにつながるところがある。働きやすさはwell-being(安寧、福利)を提供し、働きがいは、本来であれば、真の幸せを提供するのだろう。そしてそうした真の幸せは、働く意欲やモチベーションに結びつく可能性が高い。
もちろん、こうした議論をどこまで信じるかは、人によって違うだろうが、いずれにしても、働きやすさだけでどこまで有能な人材をひきつけ、モチベートできるかは、大きな疑問であることは理解できる。セリグマンの言う、真の幸せにひきつけられる可能性のほうがずっと高いし、また逆に働きやすさだけを求めて、会社に定着する人材を集めても戦力にならないのである。
「働きがい」は与えられるものではない
では、いったい働きやすさとは異なる働きがいを企業はどうしたら提供できるのだろうか。前回のこのコラムでも少し言及したが、私は、キーワードは、達成感と成長可能性だと思っている。達成感とは今の仕事に基づく働きがいであり、成長可能性は将来的な仕事への期待に基づく働きがいである。
どちらもきちんと提供するのは難しい。達成感だけを取っても、働く人にちゃんと達成感を感じてもらうには、まず目標設定が重要で、目標へのチャレンジ度などがその人にとって適切なレベルで、企業のビジョンや戦略との関連で意味がないと話にならない。次に、また目標達成プロセスでの支援も大切だ。あまり大きく関与せず、とはいえ、ある程度のサポートをし、あたかも柱の陰から見守るような支援が必要だ。最後に、評価とフィードバックも大切で、少なくともポジティブな面とネガティブな面を組み合わせる必要がある。
また働きがいには、成長といった観点も重要だろう。チャレンジし、自分のもつ技術や能力を仕事に適用し、意味のある仕事を行う経験によって人は育つ。いうまでもないことだが、こうした仕事が提供されている企業は働きがいのある企業で、逆に働きやすさでは人は成長しにくいだろう。