11月7日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で英国ブラウン首相が金融取引課税である「トービン税」を提唱した。筆者はその長所と短所を明らかにし、デメリットのほうが多い課税であると説く。
危機対応から「持続可能かつ均衡ある成長」への移行
11月7日にイギリス・スコットランドのセントアンドリュースにおいて開かれていたG20財務大臣・中央銀行総裁会議が閉幕した。そこでは、世界金融危機および世界同時不況からの回復を目指して、国際的な政策協調の必要性が再確認され、それを実現するために、「強固で持続可能かつ均衡ある成長のためのG20の枠組み」を導入することが合意された。そして、その「枠組み」づくりのための工程表が提示され、次のような段取りで、この新しい相互評価の協議プロセスを開始することとなったことが共同声明において発表されている。
まず、2010年1月末までに、G20各国・地域(欧州連合〈EU〉の代表としての欧州委員会およびユーロ圏の中央銀行としての欧州中央銀行〈ECB〉が「地域」とみなされる)の財務大臣・中央銀行総裁がそれぞれの政策枠組みと政策運営の計画と今後の経済予測を提示する。そして、10年4月に、制度的な取り決めを考慮しつつ、G20各国・地域のそれぞれの政策と共通の政策目標との間の整合性に関して、協調的に相互評価を実施するプロセスの最初の局面に入る。
10年6月の次回サミットにおいては、首脳が検討すべき政策目標を達成するための政策オプションを作成する。協調的な相互評価プロセスを経て、10年11月のサミットにおいて、その相互評価を再検討し、より詳細な政策提言を作成することとしている。
共同声明の中でも指摘されているように、このような政策枠組みを活用するに際して、最初に直面する課題は、どのように現在の危機対応から長期的目標である「強固でより持続可能かつ均衡ある成長」へ移行するかである。またこれらが、持続可能な財政、物価の安定、安定的・効率的・強靭な金融システム、雇用創出、貧困削減という政策目標と整合的かどうかである。経済危機からの回復が確保されるまで経済を支援し続ける一方、危機対応のためのマクロ経済支援策および金融支援策をどのようなタイミングで終息させるか、いわゆる出口戦略が問題となる。
また、G20財務大臣・中央銀行総裁会議においては、世界的な金融システムを世界金融危機から回復させ、そして、さらに将来の金融危機に対するために、金融安定化理事会(FSB)と協働して、改革プログラムを推進することが合意された。特に、金融機関の健全性のための規制を強化するため、バーゼル委員会が10年末までに金融機関の健全性基準を策定することとなっている。そして、12年末までを目途として、金融情勢が改善し、景気回復が確実になった時点で、金融機関の健全性のための規制強化を段階的に実施する。また、金融監督当局から、必要に応じて資本増強のための方策を金融機関に求めることも検討されている。