今年3月、安倍晋三首相は、配偶者控除など女性の就労拡大を抑制する制度の見直し検討を示唆した。
パート就業している主婦には、夫の扶養を外れる「103万円の壁」、社会保険料の負担が発生する「130万円の壁」を超えないよう、仕事の量を調節する主婦が多い。しかし、配偶者控除を廃止してしまうと、専業主婦家庭の負担増になり、少子化対策と背反する。そのため、廃止されるとしても、何らかの子育て支援とセットで行われると見られる。
その1つが手当による給付だ。日本財団の本山勝寛氏は在宅育児手当の導入を挙げる。これは保育園に子供を預けるか、家庭で育児するかを選択できるようにするための制度で、フィンランドでは月約300ユーロ(約4万円)が支給されるという。「乳幼児を育てている低・中間所得層世帯に対して直接給付されるので、家庭の経済的負担が軽減され、少子化を抑制する機能が期待される」と話す。
一方、別の控除で対応するという方法もある。1つは2010年に廃止された年少扶養控除の復活。もう1つが控除を「配偶者」ではなく「家族」単位で捉える「移転的基礎控除」だ。これは、働いているかどうかにかかわらず、夫婦がそれぞれ基礎控除を取得し、所得がなくて控除を使えない場合は所得がある側へ移転して使える仕組みで、たとえば専業主婦の夫はダブルで控除を享受できる。「就業調整が緩和されること、配偶者控除という名前をなくせること、家族で1つの控除を持てる、という3つのメリットがある」(東京財団上席研究員の森信茂樹氏)。
(時事通信フォト=写真)