ウクライナ情勢に関連し、ロシアは天然ガスの供給停止を示唆している。困るのはEU諸国だ。特にエネルギー貧困に悩むイギリス・ドイツに与えるダメージは大きい。
エネルギー貧困とは、日常生活における基礎的なエネルギー需要を満たせない状態。欧州では、電気料金、ガス料金の支払いに問題がある“エネルギー貧困層”が占める比率「エネルギー貧困率」が8.5%、4000万人を超える。
エネルギー貧困はエネルギー価格の上昇により生じる。特に欧州の電気料金は再生可能エネルギー買い取り制度導入の影響がある。
今冬イギリスの電気料金とガス料金が大きく上昇。アジア太平洋研究所主席研究員・常葉大学経営学部教授の山本隆三氏は、「デンマークの家庭用電気料金は、1kWh30ユーロセント、ドイツも28ユーロセント程度。日本の家庭用電気料金を上回る国が欧州では10カ国以上になった」と話す。北海のガス産出量の減少が続き輸入が増えているのが主な理由だ。
山本氏は「貧困層は冷蔵庫、照明、テレビ程度しか電気を使っておらず、節約で防衛することが困難というのが大きな問題である」と指摘する。
では、日本はどうか。「日本の一般的な貧困率は16%、人口は2000万人。貧富の格差は英米よりは少ないものの、独仏をかなり上回っている。日本でもエネルギー貧困の問題が発生する可能性が高い」(山本氏)という。その可能性を左右するのが、地球温暖化対策である再生可能エネルギーの導入具合だ。ドイツ並みの導入となれば、エネルギー貧困が社会問題化しかねない。
(ライヴ・アート=図版作成)