就職だから給与支給。職を手にして学べる

有力私大が相次いで学費値上げを発表するなど、わが子の進学費用をめぐる親の悩みは深まるばかりだ。

そんな中、学費は免除、全寮制で住居費は無料、そればかりか月々の給料やボーナスまで出る「大学」や「高校」が、世の中にはある。いずれも文部科学省の所管外にある、官庁や企業が人材育成のためにつくった学校だ。

たとえば、国土交通省所管の気象大学校の学生の給与は、採用当初月額15万円弱(昇給あり)。防衛省所管の防衛大学校や防衛医科大学校では毎月11万円弱、トヨタ工業学園高等部の生徒には1、2年生で約12万円、3年生で約14万円の給与や手当が支給される。さらに年2回のボーナスが出るのが一般的で、学校によっては扶養手当なども出る。

「これらの学校は非常に専門性が高く、組織の幹部候補や、業務に必要な専門技能を持つ人材を養成するといった明確な目的があります」と、大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は説明する。

「学力試験もありますが、面接やその後のキャリアパスも含め、入試というよりは『採用』と考えたほうがいいと思います」(石渡氏)。官庁や企業への「就職」であり、勉学も「業務」の一環だから、その分の給料が支給されるというわけだ(一方で、無断欠席やアルバイトは厳禁)。そして文科省所管の学校と同様、卒業時にはちゃんと学士号や高校卒業資格がもらえる。

具体的には、どんな学校があるのか。まずは国交省系の3つの大学校、「気象大学校」「航空保安大学校」「海上保安大学校」を見てみよう。

幼少期の夢もかなう航空保安大学校

気象大学校(千葉県柏市)[→月々約15万円の給与支給]は、国交省の外局である気象庁の幹部職員候補を養成する機関だ。教育期間は4年間で、気象関連の専門知識に加え、一般教養や防災行政などについても学ぶ。

1学年の定員にあたる「採用数」は毎年15人程度と、超少数精鋭型。試験方法は、選択式の基礎能力試験、学科試験。記述式の学科試験、作文試験のほか、面接、身体検査。学科は選択式・記述式ともに数学、物理、英語が出題される。最終的な採用者は、学力試験や面接のスコア順に、本人の意思確認などを行って決定される。

志望者は、もともと気象に強い関心を持つ者が大半。「試験はかなりの難関で、作文力や先を見通す論理能力も問われます。早慶と併願するような成績上位層の受験生でも、決して楽に入れる学校ではないでしょう」(石渡氏)。難易度は偏差値71(代々木ゼミナール数値。以下、すべて同)。

入学後は原則として、大学校の敷地内にある学生寮で生活しながら勉学に励む。教科書代や食費などは自己負担。卒業後は気象庁本庁や各地の気象台などに配属され、気象観測や予報、気象関連の各種の研究業務などに従事することになる。

「一般の大学で気象関連の学問を専攻しても、それを就職につなげることはなかなか難しいのが現実です。でも気象大学校なら、まず間違いなくその道でご飯を食べていける。気象好きのお子さんなら、魅力的な選択肢だと思います」(石渡氏)