災害時も活躍する自衛隊の医師・看護師
一方、防衛医科大学校(埼玉県所沢市)医学科は、自衛隊で働く医師(医官)を養成するための教育機関だ。[→医学科は月々約11万円の手当支給]
教育期間は6年間で、通常の大学の医学部と同様の授業に加え、自衛官としての各種訓練も行われる。卒業後は陸・海・空の各幹部候補生学校に進み、医師国家試験に合格すれば大学や自衛隊中央病院などで2年間の臨床研修。その後、各地の自衛隊病院や部隊などで勤務する。
在学中の待遇は、防衛大学校とほぼ同じ。6年間で国立大学でも350万、私立医大なら数千万円かかる学費が、すべて無料になるのは大きなメリットで、偏差値は69と受験生の人気も高い。
「ただし卒業後9年間は自衛隊に勤務する義務があり、それ以前に退官した場合は学費の返還義務が生じます」(石渡氏)。返還額は最大約5000万円で、卒業後の勤務期間に応じて減額される。
同じ防衛医科大学校の医学教育部に新設される看護学科にも注目したい。募集を終了した3年制の防衛医科大学校高等看護学院の後を引き継ぐ形で、この春、2014年4月より新設される。
看護学科は「技官コース」と「自衛官コース」に分かれており、どちらも入学資格は18歳以上で高卒程度の学力がある者(上限は技官コースが24歳未満、自衛官コースが21歳未満)。
一般教養科目のほか、「災害看護論」「感染症看護論」「公衆衛生看護学」を学ぶのも同学科ならでは。どちらのコースも学校で4年間学んだ後、保健師・看護師の国家試験を受ける。資格取得後は、技官コースは防衛医科大学校病院に看護師として勤務し、自衛官コースは、卒業後、陸・海・空の各幹部候補生学校に入校、その後自衛隊看護師として自衛隊病院などに勤務する(どちらのコースも卒業後6年未満で離職する場合は学費を償還する義務がある)。
入校と同時に特別職国家公務員となるため、授業料は無料。希望者は有料の寮に入ることもできる。手当は技官コースが時給830円程度、自衛官コースが月給11万円弱。
ほかには、1972年に都道府県が共同で設立した私立大学・自治医科大学(栃木県下野市)の医学部。給料がもらえるわけではなく、寮費月額8500円はかかるが、入学者全員に対して入学金や授業料が貸与される(卒業後の9年間を都道府県が指定するへき地の病院や診療所で勤務することが条件)。募集定員は123人。「へき地医療に生涯を捧げたい」という志の高い人材が殺到する。
さて、話を大学校に戻すと、防衛省所管では、陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)も、やはり手当をもらいながら勉強できる学校だ。[→月々約9万円の手当支給]
こちらは中学卒業後に入学する高校課程相当の全寮制男子校で、通信制高校との連携で高卒資格も取得可能だ。卒業後は陸上自衛隊に入隊。1年間の教育を受けた後、3等陸曹に昇任する。卒業時に入隊せず、防衛大学校や航空学生(海上自衛隊、航空自衛隊のパイロット養成機関)の受験をするという進路も可能。