生産現場のリーダーを育てる企業内学校
民間企業が所有する「企業内学校」の中にも、手当や給料をもらいながら学べる学校は存在する。大半は自社の社員を対象にした教育施設だが、外部からの受験が可能な学校も少数ながらある。
たとえば、トヨタ工業学園の高等部(愛知県豊田市)[→月々約12万~14万円の手当支給]は、トヨタを支えるモノづくりのプロを育てる学校。一般の工業高校の3~4倍の技能実習や、トヨタ生産方式や「カイゼン」の技法を学べる学科教育が特徴だ。科学技術学園高等学校通信科との連携で、卒業時には高卒資格が取れるほか、成績優秀者には豊田工業大学(こちらは有料)への進学の道も開かれている。トヨタ工業学園には高卒後に入学する専門部(1年制)もあり、どちらも卒業後にはトヨタの正社員となる。
ほかに自動車関連で、日野自動車が運営する日野工業高等学園(東京都日野市。募集は新規で中学卒業見込みの者。全寮制)[→月々約9万円~の給与支給]、自動車部品大手のデンソーが運営するデンソー工業学園(愛知県安城市。中卒対象3年制の工業高校課程と高卒対象1年制の高等専門課程、高卒対象2年制の短大課程の3課程があり、募集はすべて新卒者。通学が困難な場合のみ入寮)、マツダが運営するマツダ工業技術短期大学校(広島県安芸郡。新卒者のほか、社内選抜者も入校する。全寮制)なども、おおむね同様の教育システムと給与制度を持つ(教科書代や寮費など、諸費用については毎月の手当から天引きされる場合もあるので、確認が必要)。
一方、手当は出ないが、学費と寮費が学校負担で無料になるのは、日立工業専修学校(茨城県日立市。入学準備金の約11万5000円は必要)。卒業後、日立製作所や日立グループ各社に入社することができ、入社後も受験資格が得られれば、企業内学校である日立工業専門学院で学ぶこともできる。
先にあげた企業学校の中で、トヨタ工業学園と日立工業専修学校は卒業と同時に社員扱いとなるが、その他の学校は高卒や中卒で各企業に入社、社員として企業内教育を受けるという違いがある。いずれにせよ、受験の際にはハローワーク経由か、各社の人事部にコンタクトを取る必要がある。
「入校と同時に社員か、卒業と同時に社員かにかかわらず、企業内学校は就職先に困ることがないという点で安心です。ホワイトカラーの管理職にはなれませんが、将来の生産現場のリーダーを育成する学校としては良いのではないでしょうか」(石渡氏)