今年で81歳になるけどさ、俺はこういう雑誌を購読しているんだよ。「LEON」「Pen」、カード会員誌の「SIGNATURE」……。意外だろ?
こんなオシャレ雑誌を俺みたいなジイさんが読むなんて。ファッション、インテリア、旅行、いろんな分野のトレンドがどうなっているのか気になるんだよ。
自分の仕事に直接役立つわけじゃない。でもね、刺激を受けるんだよなあ。雑誌をパラパラめくって、そこに載っている情報にピンとくることがある。「あ、これは本物だ」ってね。考え抜いて、作られた優れたモノやサービスだってわかる。すると、俺も負けてらんねぇ、いいモノ作らねえといけねえって、不思議とやる気がむくむくと湧き上がってくるんだな。
子供のためになるお金のかけ方――。今回のテーマを聞いて声を大にして伝えたいのは、とにかく子供にこそ、「本物」を見せたり、体験させたりしてほしいってことだ。テレビやインターネットでわかった気になってちゃダメだ。子供には五感で本物を味わわせて、感性を磨いてやるべきだよ。磨けば磨くほど、勘が鋭くなって利口になる。
利口ってのは勉強の成績の良しあしとは関係ないよ。生きていくうえでの知恵のようなものだ。俺は、大企業のお偉いさんやNASAの頭のいい人たちとも一緒に仕事をしてきたけどさ、本当に仕事ができる奴っていうのは感性が違うんだよな。俺が今も「LEON」とか読むのは、感性を鈍らせたくないっていう理由もあるんだ。
ところで、本物って一体なにか。ここが問題だが、そう堅苦しく考えることはねえよ。
例えば、チェーンの回転寿司店ではなく、ちゃんとした寿司屋で食べさせるということも、本物体験の1つだよな。