要介護者の気持ちと、家族の覚悟

後で訪問看護師さんに聞いたのですが、要介護者にとって家族に下の始末をしてもらうことは精神的にかなりつらいものがあるそうです。そんなことをさせなければならなくなった自分に対する情けなさは耐えられないものだと。

私もなんとなくそれを察し、できるだけ淡々と事務的に行うように努めましたが、父がそうした態度をどう受け止めたのかはわかりません。介護にはそうした難しさがあることを感じました。

親の下の世話をする心境は、経験したことのない方にはわからないでしょうし、人それぞれなのかもしれません。私の場合は意外なほど冷静だったと思います。

今、自分がやらなければ事態は収まらない。やるしかないのだ、と思ったからでしょう。そのせいか初めて間近で見た父親の下半身や排泄したものにも、さほど動揺はありませんでした。

その一方で、初めてのため失敗もありました。シーツを汚してしまったのです。人がベッドに横たわっている状態でシーツを取り替えるのはかなりの手間がかかるものです。最初で慣れないこともあって、この手順を終えるまで1時間近くかかりました。

ただ、回数を重ねるごとに手際も良くなり時間は短縮されていきました。また、シーツを汚してしまった失敗から、前もってビニールと新聞紙を敷いておく工夫もするようになりました。

初回から下の話はどうかと思いましたが、これが介護の現実。敢えて書かせていただきました。親とは別居で物理的に介護に通えない方、あるいは同居でも仕事の関係でホームヘルパーなどの専門職に委ねなければならない方もいると思います。

しかし深夜でもそうしたことをする必要はあり、在宅で介護をする場合、下の世話は避けて通れないのです。

私の父の衰えは思いのほか早く、今年の年明けに亡くなりました。私が介護をした期間は2カ月足らず。ですが、その間多くの経験をしましたし、お世話になったケアマネージャー、訪問看護師、ホームヘルパー、訪問入浴のスタッフ、訪問マッサージ師といった介護の専門家の仕事ぶりを見、話を聞き、介護の現実を知りました。

もちろん何年という長期戦で介護をされている方の苦労はうかがい知ることはできませんが、私の経験や知己を得た介護の専門家の方々への取材を通し、親が要介護になった時にはどう対応すればいいのか、後悔しないための介護について書いていこうと思っています。

相沢光一(あいざわ・こういち)
ライター。1956年生まれ。月刊誌を主に取材・執筆を行ってきた。得意とするジャンルはスポーツ全般、人物インタビュー、ビジネス。著書にアメリカンフットボールのマネジメントをテーマとした『勝利者』などがある。