介護DVがなぜ頻発するのか、を肌で感じた

突然寝たきりになったことに大きなショックを受け、落ち込んだ父(89)も、訪問入浴のサービスを受けた時は笑顔を見せました。暗く沈んだ父の気持ちをそこまで引き上げた訪問入浴スタッフの心のこもったサービスは、とてもありがたかったですし、感謝しました。

しかし、その反面、困ったことも生じました。訪問入浴が行われた時間は午前10時30分から11時30分まで。スタッフが帰った後はちょうどお昼ご飯の時間なので、その支度をしたところ、父は熟睡していたのです。

久しぶりに入った風呂で体はさっぱりし温まった。また、初めて経験した訪問入浴でもあり疲れたのでしょう。寝顔も安らかでしたし、このまま眠っていてもらうことにしました。

ところが、晩御飯の時間になっても熟睡状態は続き、声をかけても目を開けようとしません。

結局、日課になっている就寝前の血圧と体温を測る時間帯、10時すぎ寝室に行った時、やっと目を覚ましました。11時間近くも熟睡した父は、その夜、眠れなくなってしまったのです。

父の寝室は1階、フリーランスのライターである私の仕事場兼寝室は2階にあり、ドアを閉めれば大声を出しても聞こえません。父が私を呼ぶ時は携帯電話を使っていました。その夜の2時過ぎ、枕元の携帯電話が鳴りました。嫌な予感がしました。

「体調が悪くなったのだろうか」

何事かと思って1階に下りると、父は「眠れないんだ」と言います。体調の異変ではなかったと知った私は内心ほっとしながら、「昼間、あれだけ寝たんだから仕方がないよ。目をつぶっていれば、そのうち眠れるよ」と励まして2階に戻りました。

その1時間ほど後、また携帯が鳴りました。行ってみると今度は「血圧を測ってくれ」と言うのです。私は言われた通り、血圧と体温を測りましたが、とくに数値に問題はありません。

眠れないのがつらいのだなと考え、ラジオをつけました。老人に人気があるといわれるNHKの「ラジオ深夜便」を思い出し、これを聴けば気分転換になると思ったからです。が、その30分ほど後、また携帯で呼び出されました。「ラジオは聴く気になれないから、消してくれ」ということでした。