きれいな道を掃き続ける清掃員
ガーディアン紙が2015年に伝えたところでは、ネピドーには最大20車線の道路が通り、空調付きのペンギン舎がある動物園や、少なくとも4つのゴルフ場まであった。建設費は公表されていないが、最大で40億ドル(約6300億円)ともささやかれる。当時、国が国民の保健医療に充てる支出がGDPのわずか0.4%と、世界で最も低い水準だった国での話だ。
ところが、街を歩けば、主役であるはずの人の姿がほとんどない。公式人口は100万人とされるが、晴れた日曜の午後でさえ、通りは静まり返り、レストランやホテルのロビーはがらんとしている。目につくのは、蛍光グリーンのベストを着て、もともときれいな道を何時間も掃き続ける清掃員と、建設作業の労働者たちだ。
ホテルも外観こそ立派だが、一歩中に入れば、すぐにメッキが剥がれてしまう。国連のコンサルタントとして首都を訪れた女性は、ガーディアン紙の取材に、街のホテルは「安っぽい感じがする。外はそこそこ美しいけれど、中は何もかも壊れかけていて、お湯は出ないし、カビだらけで臭う」と宿泊体験を語る。
ホワイトハウスより大きく見える公邸
24台からなるバラク・オバマ米大統領の車列が、片側8車線の大通りを進んでゆく。しかし、ほかの車はほとんど見当たらない。沿道で見物する人など1人もなく、闇の中、色とりどりの光に照らされた噴水やウォーターパークが不気味に浮かび上がる。
2014年11月、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議と東アジアサミットに出席するため、オバマ大統領が首都ネピドーを訪れた際の光景だ。夜、改革を進めるテイン・セイン大統領の公邸へ向かったオバマ氏。ワシントン・ポストの記者らが車列に加わり、その道中を書き留めた。
車列が左に折れると、白い大理石の公邸が現れる。ホワイトハウスより大きく、贅を凝らしたように見える建物だ。一行の車は堀に架かる橋を渡って、重々しい木の扉の前で止まった。前庭の木々には、流れ星を模した電飾。玄関ホールでは、高さ7メートルを超える天井から、大きなクリスタルのシャンデリアが下がっている。
一行は部屋に通されたが、首脳会談でおなじみの細長いテーブルが見当たらない。代わりに仏教様式の黄金の玉座が高々と据えられ、その足元に両大統領のための金色のひじ掛け椅子が2脚並んでいた。
民主化改革が進むにつれ、首都ネピドーはこうして国際会議の開催地ともなった。それでも、無人の街角は、為政者と人々との距離を雄弁に物語る。将軍たちが造らせたこの首都で、オバマ氏は最後に前向きな言葉を口にしている。「ミャンマーの民主化プロセスは本物だ」、と。
ネピドーの大統領公邸や議事堂、省庁の建物が地震で激しく損壊し、施工不良の建造物の数々が明るみに出るのは、それから10年あまりのちのことだ。

