驚くほど内容の薄いカルテ

患者は、軽症のうつや適応障害、不眠症などがメインであり、重篤な精神障害を持つ患者はあらかじめ対面のクリニックを受診するように促されている。つまり、「COCOROオンラインクリニック」側で事前に患者をふるいにかけ、軽症のみをターゲットに絞っているわけだ。

私が診察した中にも数名、泣きながらつらさを語る患者がいたが、9割以上が症状も軽く、カジュアルに受診(※8)したことを感じさせた。

休日の暇な時間などに3時間か6時間、都合のよいタイミングで何回か勤務し、診察を続けるうち、気がかりなことが生まれた。

再診患者を診る際にカルテを確認すると、どれもその内容が驚くほど薄い。たとえば、ある医師の初診カルテはこんな感じだ。

パソコンのキーボードを打つ人の手
写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです

〔仕事のストレスで落ち込んでおり受診。適応障害で診断書発行し、漢方薬処方〕カルテにあるのはこの1行のみ。

抑うつ症状はいつから? 外因ストレスは具体的に何があった? 病状の経過は? なぜ漢方を選んだ?

……これらのいっさいが不明なのだ。これでは患者の症状を把握しようがないし、治療の軌道修正も覚束ない。患者から「前と同じ薬で」と言われれば、私はその言葉に従うことしかできない。

患者は画面の前の医師(=私)を信頼しているにもかかわらず、こちらは根拠も、自信もない治療を施している。このことがだんだんと怖くなってきた。

※8 カジュアルに受診
画面の後ろに走り回る子どもの姿が写り込んだり、クルマの中と思われる場所から診察を受ける人もいた。患者側も長年同じ薬で安定している人なら、布団に寝ながらスマホを開いて診察を終えられるわけだ。自宅にいるまま完結する診療は、医師にとっても患者にとっても効率がいいのだ。

オンラインクリニックに勤める医師の正体

カルテには診察した医師の名前が記載されている。このオンラインクリニックに勤めているのはどんな医者なのかを確かめてみたくなった。

カルテにあった数名の医師の名前をグーグル検索してみる。外科、内科、研修医上がりの若手医師など、そのほとんどが精神科未経験だった。カルテの薄さの原因がわかった気がした。

そんな彼らが処方する薬はたいてい「漢方」もしくは「抗不安薬」だった。

そもそも漢方は効かないケースも多いのだが、副作用も少ないため漫然と飲み続ける人が多い。反対に、抗不安薬は即効性があり、患者自身の満足度が得られやすい反面、依存性が高い。専門教育を受けていない医師が、知識不足のまま、いい加減な処方と診断書を乱発する。カルテからはそのことが見て取れた。