サイゼリヤは「工場調理」を隠さない
中国のサイゼリヤには豪華な内装も、大仰なキッチンもない。注文はモバイルオーダーで、水などはドリンクバーに行って自分で注ぐ。決して、至れり尽くせりのサービスが提供されるわけではない。セントラルキッチンでの加工や冷凍食材の使用を隠すこともない。
だが、こうした効率化を低価格と安定した品質につなげ、消費者に還元している。サイゼリヤには「客をカモにしない」という誠実さがある。そんな企業としての姿勢は中国の消費者の心を打っているのだ。
そして、サイゼリヤは子ども連れの家族にとっても、財布を気にせず入れる店になっている。
あるサイゼリヤ利用客のレビューに、こんな言葉が残されている。
「私はサイゼリヤで何度も、両親が子どもに『好きなものを好きなだけ頼みなさい』と太っ腹に言う光景を見た」
一般家庭の親が、子どもに食の安全や価格を気にせず、「好きなものを頼んでいい」と言えるレストラン。おそらくこれこそ、サイゼリヤが中国の消費者に支持されている最も大きな理由である。
「厨房に包丁が一本もない」と笑われても
また、中国では洋食というジャンル自体が、もともとレトルトに対して寛容だという点も見逃せない。中華料理には「食材の新鮮さ」と「調理の即時性」を重んじる伝統があり、冷凍食材や長期保存食品に対する心理的ハードルは極めて高い。
その一方でパスタやピザといった洋食は工程を標準化しやすく、工場での事前調理と店舗調理で味の差が開きにくいと認識されている。
洋食はかつて高級品のイメージだった。だが、マクドナルドやケンタッキーといった手頃な価格のファストフードチェーンが全国に広がり中華風メニューも導入したことで、いまや庶民の日常的な味となった。つまり、工場で作られる洋食を口にすることに、もともと抵抗が小さい土壌がある。
中国の消費者もサイゼリヤの料理があらかじめ調理されていることを熟知している。そのため、「手さえあれば調理できる」「厨房には包丁が一本もない」と冗談の種にされるほどだ。というのも、簡単な加熱や組み合わせをするだけで、料理をテーブルに出せるからだ。
「西洋料理は標準化してもクオリティが保たれるが、中華料理は劣化する」。この消費者感覚こそ、中華チェーンに対する厳格な視線とは対照的な、サイゼリヤへの寛容さを生み出している。

