市場には悪質な中古車ばかりが残りやすい

「逆選択」とは、情報の非対称性によって良質な財が市場で取引されにくくなり、悪質な財ばかりが残ってしまう現象である。有名な例は中古車市場である。

市場に品質のよい中古車と状態の悪い中古車が混ざっているとする。良質な車なら高い価格を払うが、状態の悪い車にはあまり払いたくない。

しかし、買い手は目の前の中古車がどちらなのかを十分に見分けられない。

すると、良質な車としても悪質な車としても扱えず、「平均的な中古車」として価格を考えざるを得ない。

その結果、買い手が支払おうとする価格は、良質な車の売り手にとっては低過ぎ、悪質な車の売り手にとっては十分な価格になりやすい。そのような価格では、良質な中古車の売り手は市場に出しても十分な対価を得られないと考え、取引から退出してしまう。

一方、状態の悪い中古車の売り手は、平均的な価格でも売りたいと考えるかもしれない。すると、市場には悪質な中古車ばかりが残りやすくなる。

このように、買い手が品質を見分けられないために、いい商品が市場から消え、悪い商品が残ってしまう。これが逆選択である。

品質が見分けられないと、よい商品が消える

この流れを図で確認しておこう。図表1では、品質差、買い手の情報不足、良質な売り手の退出、市場に悪質な財が残りやすくなる過程を示している。

この中古車市場の例は、「レモン市場」として知られている。果物のレモンを表す言葉は、アメリカでは「期待外れのもの」「欠陥のある商品」を指す俗語として使われてきた。

レモンは酸っぱく、口にすると不快に感じることがある。そのため、見た目は普通の商品でも、買った後に欠陥がわかり、買い手に「苦い思い」をさせるものを比喩的に「レモン」と呼ぶようになった。

買い手が品質を見分けられないと平均的な価格しか払われず、その価格では良質な売り手が市場に残りにくくなる。中古車市場で、この逆選択の仕組みがわかりやすく示されるため、逆選択はレモンの原理とも呼ばれる。

逆選択は、中古車だけの話ではない。