産業革新機構のお家騒動

経産省がスパイバーへの支援をCJ機構に求めた理由は他にもあるという。

「経産省としてもスパイバー支援は産業革新機構に担わせようと考えていました。しかし当時の同機構は、田中正明社長(当時)ら取締役が高額報酬問題をめぐって経産省と対立するお家騒動の真っ只中。同機構がINCJと改称して産業革新投資機構(JIC)傘下となった3カ月後の18年12月には、INCJからJICに転籍していた同社長ら民間出身の取締役9人が辞任するなど、とてもスパイバーどころではありませんでした。ただ、BPは画期的な民間の技術革新と評価されていた。このまま手を拱いているのは勿体ないと判断して、本来は筋違いのCJ機構に出資を働き掛けたものとみられます」(A氏)

そこでCJ機構も「クールジャパンの本来の政策目的とは異なる技術系のスタートアップ企業だが、CJ機構立て直しに向けた日本発の美しい技と拡大解釈して」(同氏)、実験段階を終えたBPの量産化を目指すタイ工場の建設資金30億円の支援を決めたというわけだ。

一度は否決された追加支援だったが…

CJ機構の支援で21年3月にタイ工場を竣工させたスパイバーは、米国のアウトドア衣料品メーカー「ザ・ノース・フェイス」がBPの採用を決めたことなどを受け、BPの生産を一気に拡大させようと計画。間髪を入れずに米国工場の建設資金(新築ではなく既存工場の改築)100億円の追加支援を同機構に申請する。投資チームはこれを委員会に上程したものの、当初の結論は意外なことにノーだった。

というのもスパイバーは前回の支援決定以降、複数回にわたって法令違反を犯していたことが判明していた。このため委員会は「タイでの商業生産の結果を見定めるのが先決」と判断し、追加支援を否決した。

だが投資チームがその後も粘り強く追加支援を上程し続けたうえ、米国の著名PEファンド「カーライル」が21年9月に100億円を出資したことも手伝って、反対していた委員会も同月、スパイバーの既存株主から同社株式10億円分を買い取ることも併せて、最終的に110億円を追加支援することとなった。