大和証券出身のプロがトップに就いたが
2013年11月に発足した「海外需要開拓支援機構」(クールジャパン=CJ機構)の第2代社長CEO(最高経営責任者)に元ソニー・ミュージックエンタテインメント社長CEOの北川直樹氏が就任した18年ごろ、同機構の累積損失の急増を問題視する声がメディアを中心に上がり始めた。
18年度の累積損失は179億円と、前年度の98億円の倍近くに膨れ上がっている。官民ファンドのCJ機構は発足以降、主管する経済産業省から「民業を圧迫してはいけないが、損してもいけない」などと釘を刺されてきた。だがこうした批判を受けて、同機構内でも「クールジャパンの範疇を広げ、利益が上がりそうな案件に支援(出資)しよう」とする考え方が主流となった。
こうした中で21年6月、CJ機構内の混乱収拾に神経をすり減らした北川氏はわずか3年で辞任。代わって同機構専務執行役員の川﨑憲一氏が第3代社長CEOに昇格する。
スキンヘッドに眼力のある強面の外見とは裏腹に、性格温厚で知られる川﨑氏は、金沢大を卒業して1980年に大和証券に入社。米アリゾナ大学でMBAを取得した後、シンガポール勤務などを経て、同社執行役員から12年に「大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ」社長に転じた。さらに「大和企業投資」の社長を歴任した後、19年6月の機構入社後は総務・人事担当の専務として、混乱続きの組織の立て直しを担った。同証券時代に人事部を経験した同氏の手腕は確かだった。
委員の対立と情報漏洩
「初代社長でアパレル業界出身の太田伸之さんや、第2代社長でエンタメ業界出身の北川さんとは異なり、大和証券で投資分野を中心に歩んできた歴戦の投資のプロ。分野別に設けられた投資チームのファンドマネージャー(FM)たちとも会話が弾み、CJ機構が25年3月期に期間損益で初の黒字化を達成できたのは彼の功績です」(同機構元幹部)
その新社長を悩ませたのは、最終決定機関である海外需要開拓委員会での委員間の意見対立だった。前出の機構元幹部が解説する。
「累積損失はコロナ禍の影響もあって拡大を続けており、委員会では、しばしば欠席していながら『新規支援を取り止めるべきだ』と主張する無責任極まりない委員と、『支援取り止めなど委員としての責任放棄であり、機構の自己否定だ』と反論する委員との対立で険悪なムードに。委員は厳格な守秘義務を課せられているのに、ある委員が裏付けも取れないCJ機構の情報をウェブメディアに漏らしていました。その後、一部週刊誌に同内容の記事が掲載されたため、該当者はおおむね特定されたようです」(同)
川﨑社長は就任当初から、一部の不見識な委員に振り回されることになったという。

