デジタルと紙とで、同意基準が違う
ここまで情報漏洩が日常的になってしまっている現状では、まず「同意」という問題について、あらためて多くの人が関心をもつ必要があります。
マイナ保険証で資格確認をするさい、医療機関が他の医療機関での記録を見るには患者さんの同意を要します。受診のたびにカードリーダーの画面で選択する仕組みになっていますが、そこで同意しなければ、受診歴や薬剤歴を他機関から見られることはありません。
ただし、この同意画面にも設計上の歪みがあります。
高額療養費制度の処理のために、画面には患者さんの“同意なし”に所得区分(年収帯を表す1文字)が表示されますが、これは2024年に同意画面が省略されたさいに、法令を変えずに「解釈」だけで広げられたものです。
一方、紙の資格確認書では今も口頭で同意を取っています。マイナ保険証と紙の資格確認書とで、同意の要否が異なるというダブルスタンダードが現場には放置されているのです。ちなみに国会質疑において厚労副大臣は「所得区分は個人情報である」と認めています。
医療情報の集約促進という方向性も、昨今の情報漏洩をふまえれば非常に懸念される問題です。
先述した2026年度冬から本格運用が始まる電子カルテ情報共有サービスでは、医療機関から支払基金への情報提供には、患者さんの同意は要らないとされています。これは、「法令に基づく第三者提供は個人情報保護法上、同意不要」との根拠に基づくものです。
今後、このように私たちの同意なく集約された医療情報が、私たちのあずかり知らないところで漏れ出す可能性も否定できません。いったん私たちの手元を離れて集められてしまったデータは、「自分で守る」など不可能なのです。
くわえて、先ほど見たように、マイナポータル利用規約は、漏洩事故が起きたときでも、故意・重過失でない限り国は責任を負わない、としています。GSS事案のように、検知まで1カ月かかり、公表まで2カ月かかる体制であるのに、です。
では、どうすればいいのか
さてこうして、情報漏洩が日常的に発生しはじめた昨今において、私たちができる「自分の情報は自分で守る」という防衛手段として実効性が期待できるものとは、なんでしょうか。
古川大臣は教えてくれませんでしたが、それは、信用に値しない組織に自分のセンシティブ情報は極力預けない、ということに尽きるのではないでしょうか。
たしかにマイナ保険証は、旅行先で病歴を説明する手間が省けるし、高額療養費制度の限度額適用が自動となる便利さはあります。しかし、その一方で5年分の病歴・処方歴・健診結果、そして故意・重過失以外の免責が1枚のカードに載り、その管理は漏洩時にノンビリしていた組織にゆだねられます。
もちろん現在マイナ保険証を作っていても、医療機関への過去5年分の自身の情報を提供する「同意」さえしなければ、現時点では漏洩リスクは低いと言えます。しかし、今後「同意不要」の情報が国の基盤に集約されていった場合は、その保証はありません。
これをふまえて、メリットを取るかリスクを避けるかは、人それぞれです。
急な入院や転院が多いご家庭、複数の病院に通う方には、マイナ保険証の便利さは大きい一方で、かかりつけ医で通院を続けている方にとっては、なくて困ることはまずありません。診療はお薬手帳と、口頭での説明と、カルテで十分成立してしまうからです。
最後に、「自己防衛」しようと考えている方に。
マイナ保険証を作らなくても、あるいは作っていても利用登録を解除すれば、保険者から「資格確認書」が無償で交付されます。窓口に提示すれば従来通りの負担割合で受診でき、断られることも負担が増えることもありません(※)。
※窓口負担に変わりはありません。医療機関側の点数は資格確認の方法により多少異なる場合があります。
かく言う私、マイナ保険証の登録もしていなければ、もとよりマイナンバーカードすら作っていませんが、いまだに何ら困っていません。
