患者側の5つのメリット
まず患者さん側のメリットを列挙してみましょう。
② 過去5年分の処方歴
③ 過去5回分の40歳以上の特定健診の結果
④ 紙の処方箋の代わりに処方内容が電子で薬局と共有される電子処方箋
⑤ 高額療養費制度の限度額適用が自動になる
さらに2026年度の冬ごろからは「電子カルテ情報共有サービス」が本格運用の予定です。これは電子カルテの中身から、傷病名(病名)、アレルギー、感染症情報、検査結果、処方といった情報と、診療情報提供書・退院時サマリー・健診結果報告書の文書を、支払基金を経由して全国の医療機関と共有する仕組みです。
このような情報がマイナ保険証に載ることで、患者さんは自分の医療情報とともに移動することが可能になります。それによって旅先やはじめて受診する医療機関に、自分の正確な病歴を自力で説明する手間が省けるようになるのです。
使ってもらうほど、診療報酬が有利になる
つぎに医療機関側のメリット。医療機関側には制度上の評価が用意されています。
2026年度の診療報酬改定では、従来の「医療DX推進体制整備加算」「医療情報取得加算」が廃止され、新たに「電子的診療情報連携体制整備加算」が設けられました。
オンライン資格確認や電子処方箋、電子カルテ情報共有サービスへの対応状況に応じて、初診時は月1回4〜15点、再診時は月1回2点、入院では入院初日に80〜160点が加算されるというものです。
そして注目すべきは、施設基準の一つにマイナ保険証の利用率が入っていることです。つまり医療機関にとっては、患者さんにマイナ保険証を使ってもらうほど、診療報酬が算定上有利になるよう仕組まれているのです。
もし医療機関からマイナ保険証への切り替えを熱心にうながされることがあったら、そういうことかと納得できるのではないでしょうか。
さて、その財源はどこから来るのでしょうか。
診療報酬は保険財政、すなわち公費と保険料と窓口負担で成り立っています。医療機関へのDXインセンティブも、けっきょくのところ、すべて国民のお金で回っているということです。
このように、患者さん側と医療機関側にそれぞれ制度上のメリットは用意されてはいるのですが、私が臨床現場でじっさいに診療するにあたって、マイナ保険証に紐づけられている医療情報に助けられたという記憶は、ほんの数えるほどしかありません。
しかもそれは他の医療機関での処方内容の情報でしたから、「お薬手帳」さえあれば事足りたケースです。現状、現場では、マイナ保険証のメリットはかなり限定的といえるでしょう。
そこで次に考えるべきは、デメリットとリスクの問題です。


