「嫁を買う」が横行する背景
中国は都市と農村との格差が大きく、2020年の時点で都市の平均年収は農村の3倍近い。この格差は昔からあり、とりわけ一人っ子政策の開始から20年ほど経過した2000年頃には、生活の苦しさも相まって「農村の嫁不足問題」は極めて深刻な状態になった。
2000年頃といえば、中国が年率10%以上という猛スピードで経済的に飛躍する時期だが、同時に、その陰では誘拐事件も急増していた。嫁不足で追い詰められた農家の人々は、彼らにとって大金となる額を人身売買の仲介業者に支払って「嫁を買う」という信じられない手段に出たからだ。冒頭で紹介した女性が行方不明になった年も、まさに2000年である。
児童の場合は跡継ぎとするために男児が好まれるが、女児の場合は将来の嫁にしたり、働き手とするために買われる場合もあった。成人女性の場合は、子どもを産むための道具として買われた。そうしたことが全国各地で行われた。
中国ではどんな問題にも仲介業者が存在し、お金を支払えば、たとえ犯罪になることにも協力してくれる。利益になるから仲介業者もそうした仕事を辞めない。一人の人間を「買う」という蛮行が長年行われてきたことにも、こうした背景がある。経済大国となった中国にとって大きな恥部だが、政府がこの問題について正面から取り合っていないことは、情報の少なさからもわかる。
中国の法律では子どもや女性を誘拐・売買した場合、最高で懲役10年が科される。事案がより重大な場合は無期懲役や死刑もあると言われるが、たとえそれだけの重罪にされたとしても、犯罪に巻き込まれた児童や女性の人生を取り戻すことはできない。今回の山東省の事件から、中国の農村にどれだけ多くの同様の事件が隠されているのだろうかと考えさせられる。
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