夫は拷問などの罪で懲役9年

8人の子どもを産まされたが、途中から精神疾患を患い、首を鎖でつながれて、真冬でも暖房のない狭い小屋に閉じ込められていた。このときも農村を回るブロガーが発見し、通報したことにより事件が発覚した。この問題は中国メディアも大々的に取り上げ、中国では「鉄鏈女」と呼ばれた。

翌年、夫は拷問、虐待、監禁などの罪で懲役9年、関係者5人も懲役8~13年の実刑となった。中国のSNSでは「1人の女性の人生を台なしにしておいて懲役9年はあまりにも軽すぎる」「現代の中国でこんな問題があるなんて信じられない」「これは氷山の一角ではないのか」といった怒りのコメントが多かった。

しかし、中国のウェブサイトで誘拐・人身売買について調べようとすると、出てくる情報は驚くほど少ない。

中国版ウィキペディア「百度百科」には、2012年に全国で誘拐された児童は5907件、2020年には666件に減少した、とある。最高人民検察院のデータによると、2025年1~11月に全国で起訴された児童・女性の犯罪は950人で前年比16.4%減となっている。また、新華社通信の今年4月2日の報道には、「最高人民法院によると、女性・児童の誘拐は、2025年はピークだった2012年より77.95%減少している」とある。

しかし、ピーク時の人数や詳細は書かれておらず、報道として不完全だ。他のデータも探してみたが、実態を把握できる情報を見つけることはできなかった。

頻繁に報じられる“感動ニュース”

中国には行方不明の子どもを持つ保護者が登録する「宝貝回家」(baby come home)というウェブサイトがあるが、そこにも、中国全土の誘拐・行方不明者の公的データは掲載されていない。

しかし、断片的な情報をつなぎ合わせると、中国では長年、誘拐や人身売買の事件が起きており、現在まで続いていることは明らかだ。中国で十数年ぶりに親子が奇跡の再会を果たした、などという「感動」のニュースも1年に数回報道され、こうした報道を目にするのは珍しいことではない。

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写真=iStock.com/Xesai
※写真はイメージです

2015年には、2歳半で誘拐された子どもを探して中国全土をバイクに乗って探し回り、24年後についに発見するという実話に基づいた映画『Lost and Love』(中国名:失孤)が中国で公開された。香港の俳優、アンディ・ラウが父親役を演じたことで話題になったが、「感動ストーリー」という側面が強く、政府批判につながるものではなかった。