未払い賃金は1年でほぼ2倍に

一方で、給料の遅配は急速に広がっている。北京での会談から1週間後、賃金未払いの統計が公表された。

ロシア連邦国家統計庁が5月27日に発表したところでは、4月末時点で支払われていない給料は28億7990万ルーブル(約54億7000万円)。1年前のほぼ2倍にあたる。給料の支払いが遅れた労働者の数は、同時点で1万9000人と、1年前の2.6倍に増えた。このうち2割強を、建設業の労働者が占めている。

未払いの総額は過去の経済危機の頃より少なく、給料が支払われていない労働者の割合も、労働者全体の1%に届かない。ただし、小規模企業の未払いは、統計の対象外だ。中国人労働者への未払い分が含まれているかどうかも、明らかになっていない。

エコノミストが懸念するのは、未払いが膨らむ速さだ。高等経済学院のエフゲニー・コーガン教授は、ロシア独立系英字紙のモスクワ・タイムズの記事の中で、「企業の財務状況が悪化している明確なシグナルだ」と指摘した。

政権は、この数字が注目されるのを避けたかったらしい。亡命メディアのメドゥーザによると、国営メディアには、この統計を「できる限り無視せよ」との指示が出ていたという。政権寄りの数紙もいったん記事に統計を掲載したが、のちに記事を取り下げた。

中国のネット民も皮肉る「中ロ蜜月」の実態

ロシア経済の歪みとは別に、ウスチ・ルガの建設現場で働く中国人作業員たちは、よりによって祖国の国有企業から手ひどい仕打ちを受けていたとされる。

オニール氏の寄稿によると、中国労工観察の李強(リー・チャン)執行ディレクターは、この現場で2025年から26年にかけて、給料の支払いが3〜8カ月も滞ったと指摘している。作業員たちはパスポートを取り上げられ、移動まで制限されていたという。

デイリー・ミラーが伝えるところでは、労働者たちは、給料が素性の知れない下請け業者を通して支払われていたと証言している。気づいたときには、給料は固定給から出来高払いに切り替えられていた。ある管理者に至っては、同僚1人の銀行口座の「種類が違う」ことを口実に、全員分の給料の支払いを遅らせたという。

騒動は中国本国でも話題を呼んだ。8月9日の包囲騒動について、中央通訊社は中国のネット上の声として、「ロシアで権利を守るほうが、中国より簡単らしい」との書き込みを紹介した。自由が抑制される中国より、ロシアのほうが抗議の声を上げやすいという皮肉が生じている。

警察を呼んだ現場の中国企業を、名指しで責める声も上がった。「国外(ロシア)で自国民をいじめるだけでは足りず、外国人(ロシア警察)の手まで借りた」

ネットでの反響とは対照的に、中央通訊社が報じた時点で、ロシアの警察も中国化学第七建設も、在ロシア中国大使館も、この件について何のコメントも出していない。

当局や中国企業が無視を決め込む中、中ロ蜜月の脆い実態を示す騒動がロシア各地で広がろうとしている。

中国とロシアの国旗
写真=iStock.com/Gwengoat
※写真はイメージです

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