「未払いはない」と言い切った製油所
発注元のロスネフチは、施工の質の低さと工事の遅れを理由に、中国系企業ペトロ・ホーホアとの契約を解除している。
同社は地方政府を通じ、検収を済ませた工事の代金は常に期日どおり払ってきたと主張した。給料が払われない理由を知っているのは、ペトロ・ホーホアの経営陣だけだ、とも。製油所側に至っては、ペトロ・ホーホアの従業員への給料の未払いはないと言い切った。他社の給料の支払い状況をなぜ知っているのか、説明はない。何も決まらないまま、労働者たちは夕方、外界と隔てられた宿舎へ戻った。
翌朝、製油所の門の前に、労働者たち数十人が再び集まる。そこには国家親衛隊の護送車が停まり、撮影機材が用意され、ヘルメット姿の機動隊員が待ち構えていた。ロシア独立系調査報道メディアのジ・インサイダーは、昼に労働者たちが宿舎へ引き揚げると、間もなく治安部隊が宿舎を封鎖したと報じた。現場を見ていた人物によると、中へは誰も通されず、労働者たちは「動かないのが一番だ」と警告されたという。
治安当局が中国人の逮捕をためらうワケ
「プーチン、助けて」と労働者たちがシーツに書いてまで助けを求めた当のプーチン氏は、5週間あまり後、北京で中国との蜜月ぶりを誇示していた。
礼砲がとどろき、軍楽隊の演奏が響く。はためく両国の旗を背に、習氏とプーチン氏が打ち解けた様子で肩を並べて立つ。会場では、子どもたちが旗と花を振って出迎えていた。2026年5月20日に行われた、北京での歓迎式典だ。
「親愛なる友よ」。プーチン氏が習氏にそう呼びかけ、習氏もプーチン氏を「長年の友人」と呼んだ。CNNによると、プーチン氏は会えない寂しさを表す中国の成語「一日会わねば三秋のごとし」を引き、親密さを演出したという。AP通信によると、習氏は協定の調印後、両国関係が「史上最高の水準」に達したと述べた。
経済面で両国は互いを必要としている。中国国営の新華社によると、2025年の両国の貿易額は約2280億ドル(約36兆円)。前出のオニール氏は、2026年1〜7月の貿易額が前年同期比26%増の1590億ドル(約25兆1000億円)に達したと寄稿で指摘する。
ウスチ・ルガで警官が作業員を解放したのは、中ロの蜜月ゆえだと、オニール氏はみる。普段は容赦のない治安当局も、軍事と貿易の両面で最も重要な相手国である中国の労働者となると、逮捕をためらうというのだ。コムソモリスクで治安部隊が誰も拘束しなかったのも、おそらくは同じ理由からだろう。

