中国人が書いた「プーチン、助けて」

急増した中国人労働者の中には、未払いの給料をめぐって、プーチン氏に介入を請う者まで現れた。ウスチ・ルガの騒ぎの4カ月前、先に触れた極東の製油所でのことだ。

資金に乏しいのか、労働者たちはありあわせの材料で作った看板を掲げて抗議した。半分に折ったシーツに、「プーチン、助けて」の文字が書き込まれている。平たく開いた段ボールには、ロシア語で「セーチン、助けて」。製油所を傘下に収めるロスネフチの、イーゴリ・セーチン社長のことだ。プラカードを掲げている労働者たちは、ほとんどロシア語を話せない。それでも、やっとの思いで抗議の文字を綴った。

2026年4月12日、ロシア正教の復活祭にあたる日曜の朝。ハバロフスク地方の都市コムソモリスク・ナ・アムーレの通りを、作業着にヘルメット姿の数百人がゆっくり歩いてゆく。製油所の改修を請け負っていた中国企業のロシア子会社、ペトロ・ホーホアの労働者たちによるデモだ。ハバロフスク地方政府は参加者が200人程度であったと発表したが、ロシア独立系紙のノーヴァヤ・ガゼータは、目算でその倍はいたと伝えている。

労働者たちは国家親衛隊や警察に阻まれることなく数キロ歩き、「最初の建設者たち」を意味するペルボストロイテレイ大通りの歩道や芝生に座り込んだ。治安部隊の護送車がやって来たが、拘束された者は1人もいなかったという。

職場で抗議する多様な労働者グループの後ろ姿
写真=iStock.com/Pranithan Chorruangsak
※写真はイメージです

地元市民より権利がある外国人労働者

当局は事態の収拾に躍起になった。座り込みの場には同市のドミトリー・ザプルタエフ市長が駆けつけ、製油所の社長や市の検事も労働者たちと面会した。検察はすぐさま調査すると発表し、ロシア外務省や在ハバロフスク中国総領事館も対応に加わった。

ロシアでは、政権に異を唱える市民のデモは取り締まられるのが常だ。それだけに、この扱いは地元の人々の目に異様に映った。「外国人の出稼ぎ労働者のほうが、地元の市民よりも平和的に意見を表明する権利がある」。ノーヴァヤ・ガゼータによると、ハバロフスクの活動家ミハイル・クルバノフ氏は、そう寂しげに冗談を飛ばした。

もっとも、自由に声を上げることはできても、給料の支払いには結びつかない。