※本稿は、的場一峰『ヤマレコ社長は伝えたい アプリ時代の「絶対遭難しない」山の知識』(山と溪谷社)の一部を再編集したものです。
「いないことに気づかれるまで」の時間が生死を分ける
一人で山に入り、滑落して意識を失った。携帯の通信電波圏外の斜面で骨折し、動けなくなった。スマホのバッテリーが切れ、道に迷って動けなくなった。そんな状況で本人が救助要請できず、付近に目撃者などもいない場合、救助隊が動き出すのは、誰かが「あの人が帰ってこない」と気づき、警察に捜索依頼をしてからだ。ヤマレコに残された位置情報も自治体に提出した登山届も、「気づいてくれる誰か」がいなければ機能しない。
ここでは、山で行方不明になったとき、どんな人が発見されにくいのかを整理した。自分の登山スタイルを見直して、具体的な対策につなげてほしい。
遭難時の初動においてリスクが小さいものから最大のものまで、タイプ別に考えよう。この区分の判断材料は、ひとつだけ。当事者以外の人が「あの人が帰ってきていない」と気づくまでに、どれくらい時間がかかるか。この一点だ。
「いないことに気づかれるまでの時間」が長いか短いか。それが遭難者の生死を左右する。もちろん、滑落や急病によって急死した場合は、発見の早さは関係がない。しかし骨折などでビバークを強いられ、救助を待つ状態であれば、早く気づいてもらうことで生存確率は上がる。
つまり、「山から帰ってこない」と気づいてもらうまでの時間が長くなりそうな人ほど危険なのだ。この考え方をもとに、5つのパターンを整理してみた。
家族に「今日山に行くよ」「帰ったよ」と伝えるだけでリスクは下がる
【リスク因子・小】登山を理解する家族がいる人
ここでいう「家族」は、同居家族に限らない。同じシェアハウスのメンバーでも、定期的に連絡を取り合う友人でも構わない。「今日山に行くよ」と伝えて「帰ったよ」と報告できる相手が一人いれば、それで十分だ。
こうした人と生活を共にしている場合、帰宅予定日に姿が見えなければその日のうちに気づく。特に同居家族が「今日は夕方に帰ってくる予定」と把握していれば、遅くともその日のうちに何かあったと感じてもらえる。
ヤマレコの「いまココ」アプリを通じて位置情報を共有していれば、登山者が途中で動かないことや、場合によっては滑落していることまでわかる。公益社団法人日本山岳ガイド協会が運営する無料のオンライン登山届システム「コンパス」やヤマレコの下山連絡システムを利用すると、下山連絡がない場合に自動でメールが届くため、見守る側の負担は軽い。
遠方で暮らす家族や友人に「行ってくるよ」と伝えるだけでは、少し心もとない。連絡がないから何かあったとすぐに判断するのは難しく、「忘れているのでは」「忙しいのかな」と見過ごされてしまうこともあるからだ。

