2週間も遭難に気づかれなかったケースも

【リスク因子・大】企業等に所属せずに働く、一人暮らしの人

会社員との違いは、毎日出社する生活ではない点だ。自分で事業をしていれば、帰宅していなくても誰も気にしない。

打ち合わせに現われなかったり、あるいは期限を過ぎても連絡がないなど、仕事に差しさわりが積み重なって初めて、仕事相手が「おかしい」と感じる可能性はある。しかし仕事の都合によっては、数日程度では「体調不良かな」「ほかの仕事で忙しいのかな」と見過ごされることもある。

実際に、このパターンで2週間以上経過してから警察に捜索依頼が入った事例がある。その段階になってようやく近隣への聞き込みが行なわれ、「どうやら山に行ったらしい」と手がかりを得たという。捜索依頼がなければ、登山届の確認もヤマレコへの問い合わせもない。遭難から捜索開始まで最低でも数日から1週間、それ以上かかることも珍しくない。

仕事もない、家族もいない人が一番危ない

【リスク因子・最大】無職で一人暮らしの人

仕事を引退して、一人で暮らしながら山を楽しんでいる人は最もリスキーだ。

誰とも予定を共有していない。仕事上の出社義務や約束もない。そのため他者との接点が限られている。こうした状況では、いなくなっても気づかれる仕組みはほぼ存在しない。ただ行方不明になり、何カ月も誰にも気づかれないまま、というケースが現実に起きている。

こういった人は、登山において最も自由である一方、遭難時に最もリスクが高い。自分でなんとかしなければ、誰も来てくれないのだ。

遭難に気づいてもらえなければ捜索すら始まらない

帰ってこない人はどこにいるのか。本人に連絡が取れない状態で救助要請がなされた場合、救助が始まるまでに一定の手順がある。知っておいてほしい流れを整理した。

まず、誰かが「いないことに気づく」のが出発点だ。次に、その人が警察に通報する。警察は事情聴取を行ない、山に行った可能性があれば、計画書や装備、過去の登山歴を確認する。その後、得られた情報をもとに捜索活動が始まる。

位置情報がわかっていれば即座に救助に切り替わるが、わからなければ計画ルートを手がかりに絞り込みをしながら捜すことになる。登山口に車があるかを調べたり、同じ日に登山をした人のなかに目撃者がいないかを調べたりといった地道な調査で、遭難者がいると思われる場所を絞り込んでいく。

どの山に行ったかすら特定できない場合は、捜索そのものができない事態にもなりうる。そして位置が特定できて初めて、救助活動が始まる。天候次第でヘリは出動するが、悪天候であれば人が山に入り、担架で下ろすことになる。

「気づき」がなければ何も始まらず、捜索活動が加わるとそのぶん救助までの日数は増える。できるだけ早く助けてもらうためには、初動が早まるよう準備しておくことが重要だ。

ヘリコプター、山岳地帯
写真=iStock.com/Antagain
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