曖昧な「エキスパート表彰」
柴田勲は、巨人V9時代のリードオフマンとして、福本豊の13度に次ぐ6度の盗塁王に輝いた。谷沢健一は、1976年、打率.35478の張本勲と.00006(6糸)差の.35484で首位打者を獲得。その土井も柴田も谷沢も、すでに後期高齢者となってしまった。
筆者は独立リーグのキャンプで加藤英司に殿堂入りについて聞いたことがあるが、「もう無理やろ」と諦め顔だった。
殿堂入り投票には、引退後5年以降の選手を選考する「プレーヤー表彰」に加え、監督、コーチを退任後6カ月経過、または21年以上前にプロ野球の現役を引退した者が対象となる「エキスパート表彰」もある。
しかし近年、エキスパート表彰で殿堂入りした元打者は、2018年の原辰徳(1675安打)、2020年の田淵幸一(1532安打)、2023年のランディ・バース(743安打)、2025年の掛布雅之(1656安打)、2026年の栗山英樹(336安打)と、2000本をクリアしていない打者ばかりだった。
人気球団である巨人、阪神の選手が引退後も優遇されているのでは、という声もある。エキスパート表彰が十分に機能していないとみるべきではないか。
記録が評価されるMLB
殿堂入り表彰の投票権のある記者たちは「この選手に入れたくない」と思ってはいないはず。しかし話題性のある候補にどうしても票が集まってしまう。また、若い記者は昭和の名選手たちの記憶に乏しく、どうしても最近の選手に票が集まりがちだ。
「野球報道に関して30年以上の経験を持つ者」らが投票するエキスパート表彰の表彰委員たちも、名選手たちが積み残されている認識が薄いのではないか。
MLBでは3000本安打を記録した選手は33人いる。このうち引退から5年を経過し、殿堂入り資格がある31人中28人が殿堂入りしている。殿堂入りしていないのは野球賭博に関わったとしてMLBから永久追放処分を受けたピート・ローズ(4256安打。2024年に死去後、2025年5月に処分が終了し資格回復)と、薬物検査で処分を受けたアレックス・ロドリゲス(3115安打)、ラファエル・パルメイロ(3020安打)の3人だけだ。MLBにも明確な基準はないが、常に数字をチェックしているのだ。
短期間の華々しい活躍で殿堂入りする野球人を表彰することを否定はしない。しかし、昭和の昔に黙々と記録を積み上げた名選手たちもしっかりすくい上げ、球史にその名を刻んでほしい。
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