マンガをきっかけに運動部に入る学生
これは、単にマンガの話ではないだろう。社会学者の松田恵示は「大衆文化としてのスポーツマンガには、例えばスポーツ観と呼ばれる集合現象、あるいは生活世界において我々がスポーツ経験を構成していく定点としての『(スポーツの)良識』が隠されている」と指摘する(※3)。
実際、体育会系の部活動を始めるきっかけとしてスポーツマンガが挙げられる場合もあるし、人々が体育会系文化のあるべき姿を語るときにも、スポーツマンガは呼び出される。
例えば、日本トレンドリサーチらが行った「漫画の影響で始めたスポーツに関するアンケート」では、事前調査で「漫画に影響されてスポーツを始めたことがある」と答えた全国の男性200人を対象に調査が行われている。
年代別には、30代以下・40代・50代・60代以上が各50人ずつである。その結果、漫画の影響で始めたスポーツとしては、野球が71票、サッカーが53票、バスケットボールが23票、テニスが21票という順だった。
『テニスの王子様』をみて「スポーツを通して仲間との絆が深まる、そのスポーツが魅力的に見えたから(30代)」だったり、『キャプテン翼』をみて「夢があるし、単純にサッカーが楽しそうだと感じたから(20代)」といった感想がみられる。
勝つために恐怖と重圧に対して無知になれ
さて、『バトルスタディーズ』のなかでは、勝利と厳しい経験がリンクされる。
「DL(ウチ)の至上命題は……勝利。勝つためにはいかに恐怖と重圧に対して無知になれるかがカギや」(1巻p.165)と監督が述べ、「残飯しゃぶって泥水すすって生きてきたオレらみたいなクソ人間の存在意義は勝つことやろが」(10巻p.52)と述懐する。
とはいえ、意味の分からないルールばかりであり、私語の禁止や笑顔の禁止が命じられ、鉄の掟は「嘘つかない。陰口言わない。喧嘩しない。逢い引きしない」(1巻p.61)という野球とどれほど関係があるのか(とくに最後のものは)不明な掟が布かれる。
そして、部長は「OBは必ずこう言います。『あの寮生活がなければ、今の自分はありません』と」(1巻p.47)と厳しい生活を肯定する。
さらに、後輩への体罰をためらう人物には、「緩めたら確実に弱くなる。規則緩めるとオレらが手にした強い精神力を後輩たちは手に入れられへんことになんねんぞ?」(2巻p.50)と、勝利のために暴力を振るうことが推奨される。

