サッカーのユニフォームまで前大統領が指示
建設委員会のオラゾフ氏は2023年3月、第1期工事には33億ドル、第2期に約15億ドル(約2370億円)かかるとAFP通信に明かした。ユーラシアネットは、その総額がGDPのおよそ1割にあたると試算する。
膨大な額を動かすプロジェクトながら、指導者は細部への口出しを欠かさない。
ひときわ大きな指示棒の先が、ユニフォーム姿のマネキンを指す。街開きを3カ月後に控えた2023年4月1日、ベルディムハメドフ前大統領が建設中の街に足を運んだときのことだ。
ドゥルディリエフ市長が、サッカーチームの名も街と同じ「アルカダグ」だと報告すると、ベルディムハメドフ氏は「ユニフォームは目的にふさわしいものを」と注文をつけ、ロゴを入れるべき位置まで自ら指し示して見せた。市長も幹部たちも、必死にペンを走らせたと、ユーラシアネットは伝える。
ユニフォームまで指定されたチームの本拠地として、1万人収容のスタジアムが3カ月後の同年7月に開場した。隣には多目的スポーツ施設も建った。工期に余裕がなかったうえ、施工企業の背後に有力者がいたため、所管の国家体育・スポーツ委員会は出来の悪い施設をそのまま引き取らざるを得なかったと、トゥルクメン・ニュースは伝える。
そして、問題が表面化した。
半年後の2024年1月27日、同委員会のサパロフ委員長が、当時の建築・建設相オルノフ氏に一通の書簡を送った。書簡は苦情の訴えで、写真アルバム2冊が添えられていた。トゥルクメン・ニュースによれば、委員長は、「建設や資材に欠陥があり、競技会開催に深刻な障害となっている」と訴えたという。
欠陥工事でも責任を問われない一族企業
書簡から2週間後、オルノフ氏は解任された。解任の理由はほかにもあったとみられるが、スポーツ施設の問題も一因になったようだ。
スタジアムを施工したアジャイプ・ビナ社の実権を握るのは、アンナナザル・レジェポフ氏だ。同氏は前大統領の姉妹の夫で、セルダル大統領のおじにあたる。欠陥を指摘されながら同社に処分が及ばなかったのは、まさに前大統領本人が関わっているからだと、トゥルクメン・ニュースは指摘する。
レジェポフ氏が関わる事業の不首尾は、これにとどまらない。同氏が実権を握るもう一つの建設会社は、国家予算から23億ドル(約3630億円)が充てられたアシガバート―トルクメナバート間の高速道路を請け負っているが、長年完成していない。
アジャイプ・ビナ社も、2017年のアジア室内・武道大会に向けて納入されたロシア製エレベーターの代金を、複数社とともに支払わなかった。未払い50万ドルのうち半分超の26万8000ドル(約4230万円)が同社分で、納入元の工場は破産手続きに追い込まれた。
不可解なことにその数年後、同社はスタジアムの主要施工者に選ばれている。割を食ったのは、代金を受け取れなかった工場であり、苦情を受け取った直後に職を失った大臣だった。施工した当の会社が、責めを負うことはなかった。
