43mの前大統領像がそびえる新都市

新都市アルカダグは、首都アシガバートの南西約30キロに位置する。アハル州の新たな州都と位置づけられた。

建設が始まったのは2019年4月だと、中央アジア専門通信社のフェルガナ・ニュースは伝える。2022年12月の政府発表によると、市域は1002ヘクタールで、東京・千代田区よりやや小さい。ここに6万4000人が住む予定で、住宅は368棟、1万1652世帯分とされた。

国際市民ジャーナリズムNPOのグローバル・ボイシズによれば、第2期の工事が終わるころには総額50億ドル(約7900億円)が投じられ、千代田区の人口をやや上回る7万3000人が暮らす計画だ。

第1期では宮殿や庁舎、劇場、博物館など336の施設を建てる。なかでも国立馬術サーカスや国際馬術アカデミーといった馬術関連施設が目をひく。

新しい街は、名からして前大統領のものだ。「アルカダグ」は前大統領の称号で、「守護者」を意味する。グローバル・ボイシズによると、中心部には馬にまたがる前大統領をかたどった、高さ43メートルの記念碑がそびえる。中心街路の一つには、前大統領の愛馬アカンの名が付いた。

アルカタグで行われた街開きの式典
写真=AFP/時事通信社
アルカタグで行われた街開きの式典の光景(=2023年6月29日)

権力者の影を随所に感じさせるこの街で、人々の暮らしは隅に追いやられている。普通教育の学校は、定員720人の4校しかない。中央アジア専門英字メディアのニュース・セントラル・アジアが伝えたところでは、第1期の計画にある商店はわずか19軒だ。

ほかにショッピング兼娯楽センターが1カ所あるとはいえ、宮殿と劇場と馬術アカデミーを備えた街に、日々の買い物の場はそれだけしか想定されていない。

パンを買うため家財を売る人々

では、誰のための街なのか。

トゥルクメン・ニュースのルスラン・ミャティエフ編集長は、ラジオ・フリー・ヨーロッパの取材に、エリート層と大統領一族に近い人々のための街になると指摘する。貧しさの象徴である食料の行列から、一族を引き離す。そのための方策だというのだ。

2022年11月、東部の都市トルクメナバートでは、古着や中古の家財を売る市がみるみる膨れ上がっていた。「家々を回ると、パンを買うために家財の半分を売りに出しているのが分かる」と、住民はラジオ・フリー・ヨーロッパの取材に話した。翌12月には、首都アシガバートのいくつかの地区で、寒波のさなかに水道と暖房が止まった。

さかのぼって同年9月には、新都市の建設現場でも賃金の遅配が起きていた。公務員の給与でさえ、期日どおりに払い込まれないことがあるという。それでも政府は、慢性的な食料不足や物価の高騰をよそに、数十億ドル規模の見栄えのする事業へ優先して予算を振り向けてきたと、ラジオ・フリー・ヨーロッパは伝える。

貧困と腐敗、失業により、この数十年で数百万人が国を去った。グラスゴー大学のルカ・アンチェスキ教授は、公式統計がどうであれ人口は減っているとみる。その国に新しい都市を建てることを、同教授はラジオ・フリー・ヨーロッパの取材に「すべてが逆さまだ」と評した。「こうした事業で誰かが莫大な利益を得ていることは間違いない。これは腐敗の道具だ」