昇進を急いだ幹部が残した、歳入40年分の債務

内陸部・貴州省の山あいの一角には、コンセプトの判然としない歴史地区が鎮座する。

中国の歴史的城壁を模した建造物と、北京の紫禁城のレプリカが並ぶ。ロンドンのビッグ・ベンをまねた巨大な時計塔もそびえるが、いずれも切り立ったカルスト地形の中で、周囲の風景とまるで調和しない。

人口35万人強の独山県に建設されたこの地区は、過剰投資が陥る末路の典型例だ。香港英字紙のサウスチャイナ・モーニングポストによると、県の年間歳入がようやく10億元に届く規模であるのに対し、2018年までに抱えた債務は約400億元(約9600億円)、歳入の40年分に達した。

中国高速道路G75 海口方面 黔南州独山区間
中国高速道路G75 海口方面 黔南州独山区間(写真=Wahsaw/CC-Zero/Wikimedia Commons)

なぜ支出は止まらなかったのか。独山県には2010年、沿海部の豊かな江蘇省から45歳の潘志立(パン・ジーリー)氏が党書記として送り込まれた。貧しい地域の開発を有能な人材で加速させる政策の一環だった。昇進を急ぐ潘氏は、地域の経済成長率を短期間で押し上げやすい、インフラや不動産の開発に走った。

独立系シンクタンク「安邦」のチェン・ナイジア氏は同紙の取材に、地方幹部は数年ごとに異動し、主に在任中の管轄地域の域内総生産によって評価されていたため、「短い任期の中で目に見える成果を上げる誘因があった」と語る。

土地を売り、借金で建てるのが手っ取り早い。独山のような小さな県では党書記が絶対的な権限を握り、それを牽制する仕組みもほとんど働かなかったと専門家は指摘する。

街灯のつかない住宅地、客が来ない古城

潘氏は2020年4月、汚職や職権乱用などの罪で懲役12年の判決を受けた。だが県政府によると、2025年時点でも債務残高は200億元(約4800億円)を超える。県は街灯の電気代すら賄えず、夜になると暗闇に沈む住宅地もある。

武漢大学の黄経南(ホアン・ジンナン)教授は同紙に、「過ちは深刻で、許しがたいほどだ」と語った。

冒頭で触れた大庸古城も、まさにこの建設ブームの最中に建てられた。

週末の夜ともなれば、「湖南四水」の一つに数えられる大河・澧水の川岸には多くの人が集まり、ストリートミュージシャンの歌声が響く。通りの向かい側では繁華街がにぎわう。

ところが、この2つのエリアに挟まれた大庸古城だけが、静まり返っている。澎湃新聞の現地ルポは、この相反する光景を伝えた。

日中の古城内は近所の公園のようで、商業施設としては機能していない。同ルポによれば、店舗は数千元の保証金を納めたきりで家賃を一度も払っておらず、店主たちは「管理の不備と客足の少なさ」を理由にそろって支払いを拒んだ。澎湃新聞は運営会社が公表した電話番号にかけたが、取材時点で不通だったという。

同月には中国共産党系のチャイナ・デイリーさえ、こうした多くの「ゴーストタウン」は当初から「見栄え重視の事業(vanity project)」だったか、政府の資金を役人の懐に流入させるための隠れ蓑「ホワイトグローブ」であったと論じた。