「クールジャパン」の語感からは、日本が優位といわれるアニメやマンガなど「エンタメ系」のコンテンツが思い浮かぶが、海外市場にはすでに民間企業が進出していたうえ強大な海外勢が競っていて、おっとり刀で入り込む余地はほとんどなかった。
このため、しだいに投資先は「ライフスタイル」や「日本食」の分野に広がり、案件の半分を占めるまでになったが、それは「目利き」をさらに難しくしてしまった。風呂敷を広げすぎたのである。
担当者は交代、責任は曖昧なまま
さらに、はびこったのが無責任体制だ。
投資案件の「失敗」で、だれが責任を取ったのか。責任を追及しようにも、官側から送り込まれた担当者は短期間のうちに入れ替わり、本省の目も十分に届かない。国の資金を使っているのに、監督責任もあやふやだった。
赤沢亮正・経産相は「第一義的な責任は経営陣が負っている。経産省としては監督する者として責任がある」と釈明したが、責任の所在が明確になることは期待しにくい。
「失敗」は、起こるべくして起きたと言える。
「官の資金を呼び水に企業の投資を促し、経済成長につなげる」という官民ファンドは、安倍政権の成長戦略の柱の一つで、2013年に策定した「日本再興戦略」に基づき、各省庁の傘下で相次いで設立された。
だが、当初から「民間が担うには難しいリスクマネーを投じなければならない案件ほど儲かりにくく、逆に、儲かる案件であれば政府が介入する必要性が薄い」という矛盾を内包していた。つまり、「政策目的の達成」と「投資としての収益性」は二律背反なのである。
このため、早々に行き詰まる事例が目立ち、多額の損失を計上する官民ファンドが続出した。
たとえば、農林水産省が所管する「農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)」。赤字が年々積み上がり、2025年度末には213億円の累積赤字を計上して、26年3月に解散を余儀なくされた。
ほかの官民ファンドも巨額赤字
国土交通省の傘下で海外へのインフラ輸出を担う「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」も、2023年度に累積赤字が約950億円に膨らみ、再建計画の策定に追い込まれた。
ほかにも、2025年度末でみると、経産省所管の「産業革新投資機構(JIC)」が1071億円(24年度末の353億円から大幅増)、総務省傘下の「海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)」は114億円、環境省の「脱炭素化支援機構(JICN)」も17億円、また文部科学省の「官民イノベーションプログラム」は2024年度末で104億円の累積損失を計上している。
官民ファンドの「失敗」に共通するのは、無責任体質になりやすい構造的問題だ。
所管官庁は、リスク点検が甘いまま設立に走り、資金運用は現場まかせで監督もおざなりになった。一方、ファンド側は、功を焦ってリスクが高い案件にも拙速で手を出してしまう。それでも、チェックは効かない。悪循環であり、そこに官民ファンドの限界があった。
「クールジャパン機構」は、その象徴ともいえる。
官民ファンドは、狙いは悪くなかったが、現状を見れば実効が伴わなかったことがわかる。今後、廃止や縮小の対象となる官民ファンドが相次ぐ事態は避けられそうにない。
会計検査院が指摘しているように、官民ファンドごとに責任の所在や運用の実態に厳しい検証が求められよう。

