食欲が戻ると、不安も戻ってきた
「なんか食べられちゃうんですよ」
8月17日、主治医の坂本先生の診察室で、私はそう話しました。少し前までとは、まるで逆の相談です。
治療を始めた当初は、食欲が驚くほど落ちました。治療開始後には、寿司3貫と魚を一口食べただけで強い気持ち悪さを感じた日も、仕事の会食で料理をほとんど食べられなかった日もありました。それが8月に入ってから様子が変わってきました。今度は、「薬を増やしたのに、なぜ食べられるんだろう」と戸惑っていたのです。
治療は2.5mgから始まり、その後5mg、7.5mgへと進みました。投与後しばらく食欲が弱くなり、数日たつと徐々に食べられるようになる、という感覚がありました。ところが7.5mgに増量してから、それまでほど強い食欲低下を感じない日が出てきました。
8月16日の夕食では、豚肉の生姜焼きやステーキなどをかなり食べました。それでも気持ち悪くなりません。翌朝の体重計は79.4kg。前日から300g増えただけでした。それでも不安が浮かびました。
「薬に慣れてきたのではないか」「食欲が戻れば、また体重も戻るのではないか」。20年以上リバウンドを経験してきた人間にとって、80kgを切ったこと以上に、その数字を維持できるかが気になり始めていました。
体重以外の変化も医師と確かめる
私は坂本先生に、5mgでも強く感じた食欲低下が7.5mgでは以前ほどはっきりしないこと、それでも体重は79kg台で推移していると伝えました。坂本先生は、「こっから先の増量は正直、やってみなきゃわかんないんですよね」と話しました。ただし、ここで重要なのは、「もっと体重を落としたいから用量を増やした」ということではありません。
坂本先生からは、それ以前から、過度に速い減量はリバウンドのリスクを高めたり、筋肉量の低下につながったりする可能性があるため、体重の数字だけを追わないよう助言を受けていました。
一方で、私の場合は、軽度の便秘やふらつき、手に力が入りにくい感覚はありましたが、治療開始直後の一時的な強い気持ち悪さを除けば、強い吐き気など生活に大きく支障をきたす症状はありませんでした。体重も無理な食事制限によって落としているのではなく、自然な経過として低下していました。
さらに、その時点では体組成計で確認する限り筋肉量に大きな低下はみられず、血圧にも良い変化があり、それまで服用していた降圧剤を中止することができました。そうした体重以外の情報も含めて坂本先生が経過を評価し、10mgへの増量となりました。
自己流なら、「食欲が戻った=自分の意志が緩んだ」と考えていたでしょう。しかし今は、食欲、体重、筋肉量、血圧、服薬状況、体調を医師と一緒に見ながら治療を進めています。体重計の数字だけでアクセルを踏むのではなく、身体全体を見ながら速度を調整する。それが、自己流ダイエットとの大きな違いでした。

