JPモルガンによる1.5兆ドル計画

――パランティアはアメリカの国防総省なども顧客とする、安全保障に直接関わる企業です。ただ、世界には小売や物流といろいろなビジネスがあり、一般的な企業と愛国的(パトリオティック)​であることは、いまひとつ結びつかない部分もあります。そういった企業も、愛国的であることが今後求められ得るということですか?

【玉置】防衛分野は、国家の政策と企業のビジネスがほとんど一体化しているので、その意味では特殊な領域ではあります。

ただ、経済ナショナリズムのスコープは幅広いので、その中に入ってくるビジネスの領域も、拡大する傾向にあると思います。

例えば、アメリカの金融機関のJPモルガン・チェースは、アメリカの安全保障への貢献を目的として「Security and Resiliency Initiative」(※)を立ち上げています。その対象には、いわゆる狭義の防衛のみならず、経済安全保障上のさまざまな重要産業も含まれています。

(※)アメリカの国家安全保障に不可欠な産業を強化するために、今後10年間で最大1.5兆ドルを動員する計画

経済ナショナリズムの要求が拡大すれば拡大するほど、そのスコープに入ってくる企業活動は拡大する。つまり、より多くの企業活動が国益のレンズを通して見られやすくなるのです。

JPモルガン・チェース・オペレーションセンター
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「愛国」は企業価値につながるのか

これまで企業は、例えば脱炭素やサステナビリティといったテーマに対して、自社の事業をいかにサステナブルな存在と位置付けるかということを悩んできました。

一方、経済ナショナリズムの時代には、自社の事業と国益との関係がどうなっているのかを考えなくてはいけない状況にあるのかもしれません。

――企業が国家に貢献すること、愛国的であることは、本来企業が追求している利益を上げることや企業価値、時価総額の向上と直接リンクしないのではないかとも思います。端的に言えば、愛国的であっても企業価値が高まらないのであれば、企業にとってあまり魅力的な話ではないのではないでしょうか。

【玉置】企業目線で見たときに、この愛国的な企業行動を正当化しうるロジックは三つ考えられると思います。

一つは、国家が重視する分野は今後需要が拡大し、政策支援も行われるので高い成長が見込める、だから参入すべきという考え方です。これは今の日本政府の成長戦略の根底にあるロジックに近いかもしれません。ただ、そうした理想的な分野が実際にどれぐらいあるのかについては疑問も残ります。