「良き企業市民」から「良き企業国民」へ

――これまで企業の目線から世界を見た時には、どちらかというと自由主義が前提だったと思います。特に1970年代、80年代以降は、国家が企業活動になるべく介入しないような形で規制緩和を進めてきました。経済ナショナリズムという概念が台頭する中で、今、企業はどう対応しようとしているのでしょうか。

【玉置】企業から見ると、経済ナショナリズムが主流になるということは、企業の重要なステークホルダーの一つである国家から、もっと国益に貢献せよと言われている状況であり、それはおのずと企業の戦略にも影響を与えます。

企業が社会に貢献すべきという考え方自体は、以前からありました。例えば、企業の社会的責任(CSR)という言葉がありますが、そうした考え方のもとで、企業は「良き企業市民」であることを求められていたと言えます。

ただ、経済ナショナリズムの流れが強まってくる中で、企業は漠然とした社会貢献にとどまらず、より具体的に、国や国益にどう貢献できるのかという問いかけが強まっているのではないでしょうか。

従来は、企業の利益と社会的利益、つまり公益の間をどう調整するかが問題であって、例えばサステナビリティという考え方は、その一つの答えだったと言えます。

これに対して経済ナショナリズムが問うているのは、企業利益と、国家間の競争や対立を前提とした中での国益をどう調整するかという問題だと思っています。いわば、「良き企業市民」から「良き企業国民」になれるのか、という問題ではないでしょうか。

「安全保障に貢献せよ」という呼びかけ

――そうした中で、企業が自ら国家への貢献をアピールする動きも出てきているのでしょうか。

【玉置】積極的に国家への貢献を推進する、アピールするという考え方も、一部では出てきています。

例えば、最近日本でも話題になった、アメリカのデータ分析企業パランティア・テクノロジーズ社の共同創業者が執筆した『テクノロジカル・リパブリック』(日本版は日本経済新聞出版が発売)という本があります。

アレクサンダー・C・カープ、2023年
アレクサンダー・C・カープ、2023年(写真=UK Government/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons)

この本には、国家的な意義の小さい消費者ビジネスに没頭するテック企業を批判して、軍事・安全保障にもっと貢献せよという呼びかけのメッセージが含まれていると思います。

こうした企業による、いわば愛国的な行動を、私は「コーポレート・パトリオティズム」と表現しているのですが、こういった動きが徐々に見られてきているのかなと思います。