重要なステークホルダーとしての国家
二つ目は、国家的なリスクを回避することが企業自身の競争力の向上、あるいはリスクの低減にもつながる、つまり国と企業はwin-winであるという考え方です。例えば、特定の国に対する依存度が下がれば、国家の安全保障上の利益になりますし、同時に企業の目線から見ると、自社のサプライチェーンが断絶するリスクを抑えられるかもしれない。
そういうロジックは確かに成り立つとは思いますが、企業から見てリスクを回避するコストと、リスクを低減したことによるメリットがどれくらいあるのかを定量的に考えることは、なかなか難しいのが実情です。
三つ目は、重要なステークホルダーである国家、政府との関係を強化することが、間接的に企業価値の向上につながるという考え方です。
これは実質的に国益にどう貢献するかというよりも、いわゆるロビイングやレピュテーション対策という側面が強いでしょう。最近のアメリカ企業の動きを見ていると、トランプ政権が企業に対してさまざまな要求を突きつける中で、うまく政権と関係を築きたいという企業も少なくないように思います。そうした企業が、国益に貢献するんだというメッセージを出すことは考えられるでしょう。
「政策に売りなし」の相場格言
こうしたロジックが果たして説得力を持つかどうかは、まさに状況次第だと思います。
「政策に売りなし」という相場格言がありますが、最近の株式市場を見ても、経済ナショナリズムの論理と一致するような産業が、成長が期待される分野として株価が上がるという場合も見られています。
政府も、国益と企業のインセンティブを一致させようと、さまざまな政策を打ち出しています。つい先日改訂されたコーポレートガバナンス・コード(2026年7月21日に公表)を見ても、地政学的なリスクの変化に対して企業がきちんと対応していくことが企業価値の向上につながるという考え方が示されています。
ただ、あくまで企業は経済合理性のもとで利潤を追求する存在です。企業の成長ストーリーと経済ナショナリズムの論理がいつも一致するわけではないことには、やはり注意すべきでしょう。

