なぜ国内市場は5年で2.6倍に膨らんだのか
日本eスポーツ協会(JESU)の土屋恵督ディレクターは「競技環境の変化です」と説明してくれた。
「テレビゲームはずっと以前からありましたが、昔はゲームセンターか、友達の家に行かなければ強い相手との対戦はできませんでした。それがIT時代に入り、インターネットを通じて、いつでも対戦できるようになりました。さらに現在では、スマートフォンがあるだけで、誰でもゲームが楽しめる。ゲーム専用機じゃなくても、スマホやパソコンがあればできるようになったんです。eスポーツ参加へのハードルがすごく下がった。プレイヤーにとって、参入障壁が下がったというのが、eスポーツの市場が非常に大きくなった理由だと考えています」
スポーツの歴史をみれば、人々に古から親しまれたのは、からだを動かすフィジカルスポーツ。産業革命以降は、自動車から生まれたモータースポーツが活況を呈した。土屋ディレクターは「IT革命があって、インターネットテクノロジー全盛となった結果、情報時代の新たなスポーツとしてeスポーツが生まれるという流れは自然なことだと思います」という。
実際、若者はいま、新聞、テレビには接する機会は少ない。日常アクセスしているのは、やはりインターネット、SNS、そしてネット動画である。ネット動画で一番見られているのはゲーム系である。
オンラインで対戦するだけでなく、その試合を観戦する環境が整ったことも、ファンの拡大を支えている。アジア大会のeスポーツ日本代表の福田真澄監督は「eスポーツにはドラマがいっぱい詰まっています」と言葉に力を込めた。「選手の工夫や努力があり、涙があり笑いがあり、選手同士のドラマ、関係、絆もあり、そして家族のサポートもあるんです」と話す。
世界のゲーム人口は2028年に約40億人へ
海外に目を向ければ、スマートフォンと通信環境の普及によって、専用ゲーム機を持たなくてもゲームに参加できる地域が世界的に広がった。たとえば、中南米などでも、対戦格闘ゲームなどは爆発的な人気を博している。
「CESAゲーム産業リポート2025」によると、今や、日本のゲーム参加人口(eスポーツ競技者ほか、モバイルゲーム、家庭用ゲーム、PCでゲームをプレーする人の総数)の推移はおおむね5400万~5600万人規模で推移している。世界のゲーム人口の推移をみると、2025年が約35億7800万人から、2028年には世界の人口の約半数、約39億4800万人に達すると予想されている(※2)。
とくに「ゲーム大国」日本を含むアジア太平洋地域が最大市場で、中東・北アフリカ地域などが高い伸び率を示して急成長しているのだった。確かに「ゲーム人口」は、eスポーツの競技者や観戦者に限らない。だが、その巨大なゲーム人口こそが、eスポーツを支える大きな裾野となっている。
ちなみにeスポーツ市場規模とは、ゲームソフトそのものの売上ではなく、イベント運営、スポンサー費、グッズ、ストリーミング、配信・放映、チケットなど、eスポーツという競技を通じて生まれる売上の規模を指す。
大会の規模が大きくなり、スポンサーが増え、観客や視聴者が増えれば、賞金を増やすインセンティブも大きくなる。『ストリートファイター6』で行われる公式世界大会Capcom Cup 13では、優勝賞金100万ドル(約1億5000万円)が予定されている。過去2大会では日本人選手が相次いで優勝し、それぞれ100万ドルを獲得した。

