オーロラタワーの運営団体は…
話を聞こうと、オーロラタワーを運営していたNPO法人「千島の砦」に連絡を取ってみることにした。ホームページが閲覧可能な状態だったので、そこに記載されていた東京事務局の電話番号とメールアドレスに連絡をしてみたところ、いずれもすでに使われていなかった。ホームページの最終更新日は閉館後の2022年1月29日となっていたことからこの時点では、まだ営業再開の意思はあったのかもしれない。
納沙布岬周辺の飲食店従業員の女性に話を聞いたところ、次のような内実を教えてくれた。
「エレベーターの電気代を払うのが大変だったということを聞いたことがあります。納沙布岬は5月のゴールデンウィークから8月のお盆期間あたりまでが集客のピークなのですが、ちょうどその時期は霧が多い時期とかぶってしまうので、タワーに上ったところで北方領土が見えるわけでもなく、そうした気象条件も客足を遠のかせて経営を圧迫していた要因だったように思います」
「領土問題の最前線」の現在
オーロラタワーは、単なる観光施設ではなかった。
その目的は観光振興だけではなく、北方領土返還運動のシンボルとなることだった。展望台からは歯舞群島や国後島方面を望むことができ、施設を運営していたNPO法人「千島の砦」は、自らを「領土問題の最前線」と位置付けていた。
同法人のホームページには、「北方領土返還を願う千島の砦」という言葉が掲げられていた。オーロラタワーという名称も、北方領土返還への願いを込めて名付けられたものだという。
開業初年度には約30万人が訪れた。元島民が故郷を遠望し、観光客が日本最東端から北方領土を眺めた。かつては地元漁師の家族が展望台から沖合を監視し、ソ連の警備艇が接近すると無線で知らせていたという逸話も残る。
つまり、この塔は単なる展望施設ではなく、北方領土と向き合い続けてきた根室の歴史そのものを映し出す存在だったのである。しかし、その象徴はいま、誰も入ることのできないほど荒廃し、国境問題を抱える海を静かに見下ろしている。


