終戦直後に侵攻・占領された北方四島

北方領土とは、北海道の根室半島沖にある歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島を合わせた4島のことをいい、現在はロシアによる実効支配が続いている。第二次世界大戦以前までは、択捉島沖の得撫うるっぷ島からカムチャツカ半島の南に位置する占守しゅむしゅ島までの千島列島全島に加え南樺太も日本領であった。

根室と北方領土4島の位置関係
編集部がGeminiで作成
根室と北方領土4島の位置関係

終戦間際となった1945年8月8日、スターリン政権下の旧ソビエト連邦(ソ連)は日ソ中立条約を一方的に破棄して日本に宣戦布告。8月11日に南樺太に侵攻した。8月15日の終戦後もソ連軍は侵攻を続け、8月18日に千島列島の北端にある占守島に上陸し、戦闘の上に占領。さらに8月28日から9月5日にかけて北方四島に上陸し占領した。

旧日本軍による占守島での自衛戦闘やアメリカの強い反対がなければ、最終的には北海道にも上陸し、留萌市と釧路市を結ぶラインの北海道北部も占領する計画だった。

そんな北方領土と対峙する根室市の納沙布岬では近年、ある異変が起きている。一部で廃墟化が進行しているというのだ。

かつて最東端の地を年間30万人が訪れた

納沙布岬の一角に、ひときわ異彩を放つ巨大な塔が建っている。荒廃が進むオーロラタワーだ。

ソ連崩壊前の1987年に総工費約25億円をかけて開業した高さ96mの展望塔だ。財団法人日本船舶振興会(現・公益財団法人日本財団)会長で篤志家の笹川良一氏の支援のもと建設が実現したことから、当初は笹川記念平和の塔と呼ばれていた。北方領土返還運動のシンボルとして最初の1年間は30万人の観光客を集めた。しかし、その後、来場者は減少。

コロナ禍となった2020年1月1日をもって来場者が見込めないことを理由に休館し、現在では建物の荒廃が進む。さらに隣接する建物は大きく損壊している。なお、北海道新聞の報道によると、閉館直前の数年間は年間の入場者が8000人~1万人程度に落ち込み、運営資金は関係者や支援者の寄付に頼っていたという。

※北海道新聞「納沙布岬から北方領土を眺望 オーロラタワー休館続く コロナで財務悪化 再開見通せず」(2020年12月21日)

荒廃したオーロラタワーの建物
筆者撮影
荒廃したオーロラタワーの建物

日本最北端の宗谷岬のある稚内市が年間50万人以上の観光客を集める北海道有数の観光地として定着しているのに対し、日本本土最東端の納沙布岬を抱える根室市の観光入込客数は約30万人。北方領土問題の最前線でありながら、その存在は日本人の意識から少しずつ遠ざかっているようにも映る。