廃墟化した巨大タワーに「びっくり」
筆者は、こうした実態を確認するために、根室駅前バスターミナルから路線バスで納沙布岬へと向かった。納沙布岬は根室市の中心部からは、20kmほど離れており、平日5往復、土休日4往復の路線バスが運行されている。所要時間は44分だ。バスには20名ほどの観光客が乗り込んだ。
納沙布岬に向かう途中、バスの車窓からは、「日本最東端のENEOS」という看板を掲げたガソリンスタンドや、日本最東端の郵便局と書かれた珸瑤瑁郵便局の局舎が見え、最果ての地に来たことを実感する。そして、やがてバスの車窓には、異彩を放つ白い巨塔が現れ、ほどなくして終点の納沙布岬バス停に到着した。
納沙布岬の一帯は、根室市が運営する北方領土資料館や民間の飲食店などが営業しており、観光地として整備されている。しかしその一方で、その周辺には荒廃したオーロラタワーや、損壊が進む閉店した店舗などが点在している現実があった。
バスを降りた乗客のうち1組の旅行者がオーロラタワーに向かっていったことから話を聞いてみた。東京都から北海道に旅行に訪れたという30代会社員の男性2人組だ。
「ご当地キャラクターのエリカちゃんを目的に納沙布岬にやってきました。目の前にタワーがあったことから上れるのかなと思って入り口前まで入ってみたのですが、来てみると荒廃した廃墟になっていてとてもびっくりしました。
ロシアから見て対岸の納沙布岬の廃墟化が進行していることで、日本が舐められてしまうようなことにならないか心配になりました」
根室市なのに日本人は銃撃されるリスク
納沙布岬から歯舞群島の貝殻島まではわずか3.7kmしか離れていない。その中間線となる1.85km沖合がロシアの実効支配線として事実上の「国境」となっている。貝殻島の所属は北海道根室市になっているが、日本人が不用意に近づくとロシア国境警備隊から銃撃を受けるリスクがある。2006年には貝殻島周辺で日本漁船が実際に銃撃を受け死者も出ているのだ。
さらに、納沙布岬から7km先にある歯舞群島の水晶島には、ロシア国境警備隊の監視小屋があり、望遠鏡でその姿を確認することもできる。地元の方の話によると、日によっては兵士や警備艇の姿を確認できることもあるという。
一方で、北海道側には根室警察署納沙布駐在所が置かれ、警察官が住み込みで勤務している。さらに駐在所にはコンクリート製の監視塔が隣接しており、ロシアとのにらみ合いが続いているといっても過言ではない状態だ。
また、納沙布岬の周辺は一部で住宅街になっており、大きな一戸建てが立ち並んでいる。北方領土資料館で話を聞いたところ、「いずれも漁師の家で、納沙布岬周辺には小さな漁港が点在していることから、そこから出漁している」のだという。



