孤食と歯抜けの微妙な関係
歯の健康との関連では、「孤食」との関連も指摘されている。
歯の状態を含む「口腔の健康」は、コミュニケーションや社会関係の重要な役割である発話や笑顔、食事と強く関係しており、とりわけ高齢者の孤食が、死亡や抑うつのリスクを増加させることが明らかになっている。
約15万6000人の高齢者を対象とした調査の結果では、歯や義歯の利用状態が悪いほど、すなわち歯の数が少なかったり、義歯をつけていなかったりするほど、孤食が多いことがわかっている(図表5)。年齢や置かれた環境などいろいろな条件が同じだと仮定するとリスクは1.81倍高くなるとも計算されている(図表5の原資料https://www.jages.net/library/
による)。
また、この傾向は、誰かと同居している高齢者と比べ、一人暮らしの高齢者でより強いことも明らかになっている。
このデータは、歯抜けを放置すると孤食に陥りがちとなることを示すものだが、孤食になると歯抜けが増えるという傾向、あるいは孤食と歯抜けは孤独・交流不足がもたらす平行現象であることを示している可能性もある。
他者との交流が少なくなると「誰かに見られている」という意識が薄れ、生活にメリハリがなくなりがちだ。このため、食事内容が偏ったり、運動不足になったり、喫煙や過度の飲酒といった不健康な習慣に陥りやすくなる。定期的な通院や服薬管理がおろそかになるケースも少なくない。社会的孤立やひとり暮らしが死亡リスクを高めるという研究結果もある。ここで紹介した歯の健康と孤食との相関もそうしたマイナスの連鎖の大きな一要素となっていると考えられる。
東京や大阪など大都市では、今後、孤独な高齢者が増加し、孤食の比率も上昇していく可能性が高い。都内のひとり暮らし高齢者の割合は1980年度(11.1%)から2020年度(22.2%)、さらに2025年度(速報)では29.1%へと急増している。
現状では大都市地域における歯の健康はかなりよい状況にあるが、よほど、大都市におけるコミュニティ機能の強化や交流の拡大を進めていかないと、今後、大都市は歯抜けの老人だらけとなるおそれがないとは言えなかろう。
検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます


