北海道・北東北で特に目立つ永久歯の喪失
しかし、日本人全体の歯の改善とは裏腹に、歯の状態の「地域格差」は確実に存在する。健康格差は、貧富や学歴や生活習慣の違いについても見られるが、歯の状態はそれらを総合的に示していると考えられる。
図表3に永久歯の喪失状態(40歳以上、19歯以下の者の割合)を示す都道府県マップを掲げたが、これを見ると、傾向として、永久歯喪失比率が高いのは北海道・東北地方、特に北東北、および九州・和歌山・沖縄など西南地域であり、列島中央部や大都市圏で相対的に低く、特に東京や大阪ではかなり低くなっている。
具体的な数字から判断すると、
ワースト5は岩手(39.4%)、青森(33.5%)、長崎(32.2%)、秋田(29.6%)、北海道(29.3%)
ベスト5は香川(12.4%)、大阪(13.8%)、東京(14.8%)、広島(15.2%)、静岡(16.3%)
の順となっている。
ワースト1位である岩手の39.4%とベスト1位である香川の12.4%との間には3倍以上の格差がある。大阪・東京はベスト2、3位で、それぞれ13.8%、14.8%となっている。
※成績の悪い神奈川はサンプル数が少ないため、やや信頼度の低い結果となっている可能性が高い。
日常生活が制限されることなく介護なしで生活できる期間を健康寿命と呼ぶが、地域別の健康寿命の状況を図表4に掲げた。これを見ると、北海道、北東北や西南日本で健康寿命の短い地域が目立っている。前出の歯抜けの地域差とかなりパラレルな傾向を示している点に気づかされる。
(資料)日本老年学的評価研究機構プレスリリース(2021年1月)
歯抜けと飲酒、喫煙、塩分摂取量の関係
歯の健康の地域格差についてはさまざまな要因が指摘されている。
例えば、飲酒量や喫煙率だ。それらの数字が高い地域の代表格は、青森県や北海道、東北・北日本エリアだが、こうした地域は歯科検診を受ける人が少ない地域とも重なっている。こうした行動パターンが歯抜けを放置し、健康寿命を短くする傾向に結びついている可能性が高い。
この点について、図表4の原資料では、統計上、歯科医療費の使用額が高い地域(医療圏)ほど健康寿命が長い傾向を示すことが明らかにされている。東京や大阪など大都市地域では歯科検診を受ける人も多く、全般に健康意識が高いため、歯の健康も比較的維持されており、健康寿命も短くない。
一方、冬の厳しい寒さ・豪雪に見舞われる東北地方では、濃い味付けや塩分の高い食事(漬物、塩辛、スープを飲み干すラーメン文化など)を好む傾向がある。塩分の過剰摂取は高血圧などの生活習慣病を招く。生活習慣病のうち糖尿病などの全身疾患は、歯を失う最大の原因である「歯周病」を重症化させる大きなリスク要因(相互に悪影響を及ぼす)として知られている。
東北と並んで歯抜けの人が多い西南日本に関しては、上記に挙げたような要因だけでは説明がつかない側面もあると思われる。

