「重いものを持たなければ筋肉はつかない」は過去の話

かつては「重さこそ正義」と考えられていましたが、2010年代以降、その常識を覆す研究結果が次々と発表されました。

決定打となったのが、2017年にシェーンフェルドらが発表したメタアナリシスです。

彼らは21の研究データを統合し、高強度(重い)と低強度(軽い)のトレーニング効果を比較しました。その結果、総負荷量が同等であれば、重い・軽いの違いに関係なく、筋肥大の効果に差はないという衝撃的な結論が示されたのです。

さらに2021年、ロペスらによる大規模なネットワーク・メタアナリシスがこの結論をより強固なものにしました。彼らは負荷を次の「高強度/中強度/低強度」の3つに分類して比較を行いました。

低強度 vs 中強度 vs 高強度トレーニングによる筋肥大の効果の比較
出所=『科学的に正しい筋トレ大全』(KADOKAWA)

その結果、どの強度であっても、疲労困憊(限界)まで実施して総負荷量を高めた場合、筋肥大効果に有意な差は認められなかったのです。

これは、「重いものを持てないなら筋肉はつかない」という固定観念を完全に過去のものにしました。

この法則は、女性にとっても朗報です。

2023年、モリナーリらは女性のみを対象にした40の研究(1312名分)を分析しました。その結果、女性の筋肥大に最も強く影響していたのは、トレーニング強度(重さ)ではなく、セッション数や頻度といった量的な要素だったのです。

重いバーベルを持つことに不安がある女性でも、低~中強度の負荷でセット数や回数を重ねれば、十分に身体を変えられることが科学的に証明されています。

回数をこなせば温存されていた筋線維を働かせることができる

では、なぜ軽い重量でも、高重量と同じように筋肉が育つのでしょうか?

冒頭で触れた「サイズの原理」では、「重い負荷をかけないと、大きな運動単位(速筋)は動かない」とされていました。しかし最新の研究では、「疲労」がその壁を突破するカギであることがわかっています。

2025年に報告された最新のレビューでは、低負荷でも筋肥大する理由として2つのメカニズムを挙げています。

1.疲労による「強制動員」(間接的メカニズム)

軽い重量でトレーニングを始めると、最初は小さな運動単位(遅筋)だけが使われます。しかし、回数を重ねて遅筋が疲れてくると、脳は「力が足りない!」と判断し、温存していた大きな運動単位(速筋)を助っ人として動員し始めます。

疲労による「強制動員」(間接的メカニズム)
出所=『科学的に正しい筋トレ大全』(KADOKAWA)

つまり、「疲れるまでやる」ことで、軽い重量でも最終的にはすべての筋線維を働かせることができるのです。