強者は非効率や非合理を嫌う、そこに弱者の特権がある

メタゲームを攻略するために僕がよく考えているのが、「非対称戦略」です。

多くの人は、あらかじめ決められたルールや評価軸の中でいかにうまく立ち回るかという「ルール内最適」を目指しますが、資本力とAIの演算能力で勝る強者の前では、その努力はすぐに無効化されます。弱者がメタゲームで勝つためには、強者が有利になる「暗黙のルール」をAIに客観視させた上で、その逆を突く「非対称戦略」を取る必要があります。

これは市場の論理から見れば、非効率極まりない馬鹿げた行動に映るでしょう。しかし、メタゲーム的な視点で見れば、これほど理にかなった行動はありません。

何より、「効率」と「最適化」を追求することで勝ち上がってきた彼らの巨大なシステムには、こうした「手触りのある非合理」を許容する余白が最初から存在しないのです。つまり、これは「強者が合理的な判断ゆえに模倣したくない(できない)非合理」にあえてリソースを投下する、弱者の特権を活かした戦術なのです。

強者が捨てた場所こそが「弱者の聖域」

強者が採用している「効率」や「リーチ数」という評価軸をAIに整理させ、あえてその逆、あるいは強者が合理的判断ゆえに模倣したくない「非合理」に活路を見いだす。それが、強大すぎるアルゴリズムの引力から自由になり、自分らしい方法で勝利するための近道なのだと、僕は思っています。

【図表1】強者に勝つための「非対称戦略」
出所=『メタスキル 努力の価値が変わる時代の「AI×自分」戦略』(NewsPicksパブリッシング)

僕が学生時代にやっていた掲示板の運営も、まさにこの「弱者の戦い方」でした。

当時、インターネット会社はほとんどなく、まともな株式会社は「リスクが高すぎる」という理由で匿名掲示板には手を出せませんでした。管理が大変なわりに儲からないし、何が起こるかわからない。だから、「時間はあるけど失うものがない」暇な学生だった僕やひろゆきさんくらいしか、そのゲームをプレイしていなかったんです。

強者が「合理的判断」として捨てた場所に、弱者が「時間」という資本を投下して居座り続ける。すると、そこがいつの間にか巨大なコミュニティになり、強者が後から入りたくても入れない独自の聖域になる。これもまた、AI時代に個人が組織を凌駕するための、1つの形です。