「退屈」や「虚無感」が危険な理由
もう一つの危険は、もっと静かなものです。
「脳が危険を察知してブレーキをかける」と聞くと、多くの人は、心臓がバクバクするような強い恐怖や、夜も眠れないような深い不安だけをイメージするかもしれません。
しかし、現代人の私たちが日常で先延ばししてしまうとき、そこまで激しい感覚になるでしょうか。
「なんかやる気が出ない」
「身体がだるい」
「これをやって何になるのか意味が見いだせない」
むしろこのように、一見すると静かで退屈な感覚であることのほうが多いはずです。
私たちの脳にとっては、実はこうした「退屈」や「虚無感」もまた、避けるべき危険の一つです。
なぜ、単なる「だるさ」が危険になるのでしょうか。
それは、脳が極限まで「コスパ」を求める器官だからです。
「これは割に合わない」と先延ばし
原始時代の過酷な環境では、食料は極めて貴重でした。そのため、私たちの脳は「生き残るためにプラスにならない活動」に貴重なエネルギーを割くことを、生存を脅かすリスクと見なすように進化しました。
脳にとって、見返りのないタスクにエネルギーを使うことは、「倒産確実な事業に全財産を注ぎ込む」ような無謀な投資と同じです。そのため、あなたが「この作業、やる意味あるのかな?」と少しでも感じた瞬間、扁桃体は「エネルギーを浪費するな」とブレーキを踏みます。
これが、あなたが体感している「だるさ」や「虚無感」の正体です。
原始時代だと、実際に先延ばしすることによって命が助かることもあったでしょう。しかし現代社会では、仕事に失敗しても死ぬことはありませんし、会社での評価が下がったところで、生きていけなくなることもありません。
ただ、現代の私たちの脳は、そんな原始時代からほとんど変化していないと言われています。
「失敗するかもしれない」
「期待に応えられないかもしれない」
「この仕事は割に合わない」
こういった「危険」の可能性を感じるだけで、扁桃体には生存の危機に近いものとして処理されてしまうのです。
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