脳が無意識にブレーキをかけている

多くの人は、先延ばしという行為を「選択の結果」だと考えています。

「やるか、やらないか」
「今やるか、後でやるか」

これらのなかから、自分の意志で「今はやらない」という選択肢を選んだから、先延ばししてしまったのだと思い込んでいます。

しかし実際には違います。先延ばしは意識的な選択ではなく、脳が引き起こす無意識の反応です。

手に仮想脳を保持している白い服を着た女性
写真=iStock.com/mi-viri
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先延ばししてしまうのは、あなたが怠けているからではありません。それは、あなたの脳が「今は動くな」とブレーキをかけているからです。この「ブレーキ」の仕組みには、脳科学的メカニズムと、人類の進化が密接に関係しています。

「生存モード」を司る扁桃体が働くと…

人間の脳には、大きく分けて2つのモードがあります。

1つは「生存モード」、もう1つは「理性モード」です。

この2つのモードは、それぞれ別の脳の部位が司っています。

「生存モード」を司るのが「扁桃体へんとうたい」と呼ばれる部位です。扁桃体は、感情の中枢とも呼ばれ、特に危険を察知した際に、不安や恐怖といった情動反応を生み出すことが知られています。

次に「理性モード」を司るのが「前頭前野ぜんとうぜんや」と呼ばれる部位です。前頭前野は扁桃体とは反対に、思考や感情の制御といった理性を生み出す部位です。

今、やるべきタスクを目の前にしたあなたの脳にも、実はこの仕組みが働いています。

やるべきことに直面したとき、脳は次のように問いかけてきます。

「このタスクは安全なのか?」

タスクに少しでも危険を感じると、扁桃体が働きます。すなわち、脳は「生存モード」が優位になります。このとき脳内では、恐れ、不安、緊張といった負の感情が立ち上がります。

「失敗したらどうしよう」
「拒否されたらどうしよう」
「損したらどうしよう」

こうした強い不安や恐怖の感情が強まると、前頭前野の働き、すなわち「理性モード」は弱まり、「やったほうがいい」とわかっていたことでも、身体が動かなくなってしまいます。これが先延ばしの脳科学的な仕組みです。

つまり先延ばしは、脳があなたを危険から守ろうとしたときに起こる防御反応だということです。決してあなたが怠け者だからではないということが、わかっていただけたでしょうか。

では、なぜ宿題や仕事のような、本来は命にかかわらないはずのタスクが、脳にとって「危険」と見なされてしまうのでしょうか。