メジャーリーグ観戦やクルーズ旅行も堪能

一方、高級老人ホームは将来有望な分野だ。日本総研の推計によると、2024年6月末時点で家計が保有する金融資産2212兆円のうち、60歳以上が6割にあたる1400兆円を保有しているという。悠々自適の老後を送る人々を取り込むべく、各社とも経営資源を投入するのは自然な流れだ。

マンションの場合、立地や住設機器のグレードなどハード面が重視されるが、高級老人ホームではサービスもここに加わる。

冒頭に出てきたパークウェルステイト西麻布では麻雀やカラオケといった老人ホーム定番のイベントはもちろん、日本橋での落語鑑賞会やホテルでのアフタヌーンティー、メジャーリーグの観戦ツアーやクルーズ旅行などを通じて積極的に外出を促し、入居者同士の交流を打ち出している。

ターゲットとして狙うのは、健康や消費への意欲が高い「アクティブシニア」だ。介護付老人ホームは要支援・要介護の認定を受けた高齢者を対象としているが、パークウェルステイトでは入居者の大半が自立している。

嘉村は「自立した元気な高齢者の皆様が新たなライフステージ、ライフサイクルを好きだと感じていただける新しい住まいの形をご提案する」として、身体の自由がきかなくなってから入居するのではなく、まだ元気なうちに入居してもらうと説明する。

エステを受けられるリラクゼーションサロン
筆者撮影
エステを受けられるリラクゼーションサロン

そこには、スタッフに促されてお遊戯や歌を強いられるという旧来型の老人ホームのイメージはどこにもない。

「健康的な老後」を過ごすお手伝い

野村不のオウカスの場合、フィットネス施設「メガロス」を運営するグループ企業を通じ、体力測定や運動プログラムを提供。運動指導員が常駐し、カウンセリングしながら運動を継続できるようにフォローしている。

就寝時間や睡眠状態も把握し、寝室の環境や生活習慣の見直しも提案するという。東急不のグランクレールでも、クラシックコンサートや日帰り旅行などエンタメ要素を重視する。

高齢者向け住宅は規模が大きいといえないビジネスだが、不動産デベロッパーにとっては、グループ全体への波及効果が見込める。例えば、入居者が自宅の処分を希望する場合にはグループ内で売買を仲介できるし、ホテルやフィットネスなどのサービスとも相性が良い。

また「駅近」が好まれる分譲マンションに比べて老人ホームの入居者は通勤や通学がないため、交通アクセスが多少不便な立地でも物件開発の余地が広がる。物件の所有権を小口化し、富裕層向けの金融商品として売り出す例も出てくるなど、経済圏はじわりと広がっている。